アベノミクスの失敗(反証)と、反証の可能性の欠如

 円安が進んでいっている。一ドルが一五八円になっている。

 円安をまねいたのが、アベノミクスだとされているのがある。経済の政策の失敗である。

 安倍晋三元首相の経済の政策であるアベノミクスは、円安をまねいていることから、失敗したのだろうか。それともアベノミクスはとくに悪くはないのだろうか。

 どういう悪さがアベノミクスにはあるのかといえば、経済がよくなったか悪くなったかだけにあるのだとはいえそうにない。それとは別に、反証の可能性をもっていないところがあるのがアベノミクスだろう。

 うそを証明できる可能性をもつ。その可能性をもっていないと、反証の可能性がないことになる。

 アベノミクスは、反証の可能性をもたない。うそを証明できる可能性をもっていないのである。

 アベノミクスで日本の経済がよくなるとされていたけど、それがうそである見こみがあった。経済は複雑系(complex systems)によるものだから、必ず良くなるのだと断言することはできづらい。ていどをふまえることがいる。一〇割においてこうだとは言い切らないようにしておく。複雑すぎるのが経済だから、完全に未来を予測できづらい。

 アベノミクスで言われていることが、本当ではない。まことではない。そうしたことは無いのだとされていた。うそであるかどうかが、きょくたんに言えばゼロだとされていた。ほぼゼロに近い。

 うそであることはまったく無い。完全に本当でありまことである。アベノミクスが、教義や教条(dogma)と化す。たとえどんなことがあっても反証されないのであれば、それは教義や教条になっているのを示す。

 すごく期待させたものなのがアベノミクスだ。人々に期待をもたせた。日本の経済が良くなるのにちがいない。期待させることによって、経済をよくして行く。

 人々に期待をもたせることが裏目に出てしまったのがあるかもしれない。お笑いの振り(フリ)と落ちでは、期待させることが振りになって、それがうら切られることが落ちになる。期待とうら切りだ。

 アベノミクスにかぎらず、それと似ている、もしくはまったく反対のどのような経済の政策であったとしても、反証の可能性を持っていなければならない。こういうことをやれば日本の経済が良くなるのだと言われていても、それがうそである見こみがある。

 言っていることについて、まったくうそであることは無いとしてしまうと、アベノミクスと同じようになってしまう。うそであることはまったく無いのだとしてしまい、反証の可能性をもたなくなってしまう。

 いま円安がとても進んでいるのは、アベノミクスが反証されていることを示す。円安が進んでいて、物価が上がっていて、人々が生活に苦しんでいる。円安は日本人にとって良いところがまったくないのだと言われているのがあり、これはアベノミクスが反証されていることと受けとれるところがある。

 アベノミクスで言われているのではないことが現実に起きているのだとすれば、アベノミクスが反証されたことを示す。言われていたことではないことが現実に起きたのだとしても、アベノミクスは失敗していない。成功した。失敗を認めずに成功したのだとするのは、もともとアベノミクスが反証の可能性をもっていないからだろう。

 経済の政策であるのがアベノミクスだけど、それとはちょっと話がちがうものとしては、いま日本の経済はよくなっているのか、それとも悪くなっているのかがある。円安が進んでいるのは、日本の経済にとって良くはたらいているのか、それとも悪くはたらいているのかがある。

 経済についてのさまざまな見なし方がある。経済のよし悪しや、円安のよし悪しについてだ。経済が悪かったり、円安が悪かったりするのだとして、それがアベノミクスのせいなのか、それともそうではないのか。

 色々な見なし方が経済についてはできるけど、それらのどれであったとしても、反証の可能性を持つことがいる。たとえば、いま日本の経済は悪くなっているのだと見なす。円安がわざわいしている。アベノミクスが失敗したせいだ。一つの見なし方としてそう見なすことができるけど、それは絶対のものだとはできづらい。あくまでも試しとしての見なし方にすぎず、反証されることがある。反証の可能性をもっていないとならない。

 反証の可能性をもっていないことが、アベノミクスの悪いところだった。反証の可能性をもつようにしていれば、まだよかった。アベノミクスについてをそのようにとらえてみたい。

 どこに悪さがあったのかという点では、反証の可能性をもっていないことが悪かったのである。まちがいなくアベノミクスで成功するだとか、たしかに正しい経済の政策だとしたことこそが、まちがいのもとだった。これこそまさに正しい経済の政策なのだと基礎づけたりしたて上げたりしたのである。基礎づけ主義によっていた。経済の政策の中身とはべつに、政策論としてふさわしいあり方ではなかったのである。

 参照文献 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『新版 ダメな議論』飯田泰之(いいだやすゆき) 『思考のレッスン』丸谷才一(まるやさいいち) 『大学受験に強くなる教養講座』横山雅彦 『うその倫理学』亀山純生(すみお) 『九九.九%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』竹内薫(かおる) 『「複雑系」とは何か』吉永良正 『うたがいの神様』千原ジュニア 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫