性の多数者は正しくて、少数者はまちがっているのか―性の少数者についての表象

 病気なのが、性の少数者(LGBTQ)だ。その病気は宗教によって治せる。日本の宗教の団体はそうしたことを言っていた。

 韓国のカルト(cult)の宗教は、性の少数者は罪だとしていた。

 宗教の団体がいっているように、性の少数者は負のものなのだろうか。

 どういうふうに性の少数者を見なすのかは、表象(representation)だ。表象する主体が宗教の団体であり、表象される客体が性の少数者だ。

 外に表現された心の像(image)なのが表象である。

 行動者なのが主体である。その相手なのが客体だ。

 主体が上に立って、客体を下に置く。客体を下においた形で客体のことを表象することが多い。

 主体が客体のことを表象するのは、人為や人工のものだ。人為や人工で構築したものなのが、客体の表象である。かんぜんに固定化されたものなのではなくて、変えることができるのが客体の表象である。脱構築(deconstruction)がなりたつ。

 男性であれば、価値があり、女性であれば、価値がない。男性中心主義だとそうすることになるが、これはあやまりだ。男性や女性であるのは、何々であるの事実(is)であり、そこから自動で何々であるべきの価値(ought)をみちびかないようにしたい。自動で価値をみちびくと自然主義の誤びゅうにおちいってしまう。

 性の少数者であるのは何々であるの事実に当たるのにとどまる。その事実から自動で価値をみちびくと、自然主義の誤びゅうにおちいってしまう。

 事実と価値をふ分けするようにして、事実にたいしていろいろな価値の持ち方ができるのをよしとして行く。

 範ちゅう(集合)と価値を分けることがなりたつ。男性であれば、その範ちゅうの中には良い人もいれば悪い人もいる。すべてが良い人ばかりではないのはたしかだ。

 連続性(analog)によってみると、男性であれば、その範ちゅうの中の人たちはみんな同じなのかといえば、そうとは言えそうにない。男性の記号の表現であらわされる人であっても、その記号の内容はぜんぶが同じなのではなくて、ちがいをもつ。

 その範ちゅうの中にどれくらいの人がいるのかは量だ。その範ちゅうがどういった内容のものなのかは質だ。量と質があって、男性の範ちゅうであれば、日本だったら量は五〇〇〇万人くらいいる。質はどうかといえば、まちまちだ。

 たとえ男性の範ちゅうであったとしても、みんなが、これこそ男性だといった質をひとしく持っているとはいいがたい。こういう質なのだとは、いちがいには言い切りづらい。だいたいにおいて当てはまるような、おおよその型(pattern)はあるかもしれない。

 量においても、質においても、それぞれの人が自由に自分を見なしてよい。そういうふうに性が自由化されればよい。性が自由でないと、男性であれば、男性の範ちゅうの中のひとりだとされて、これこそ男性だといえる質をその人が持たなければならなくなる。押しつけになる。

 自由では、からの自由と、への自由がある。何々からの自由と、何々への自由だ。消極の自由と積極の自由である。男性であったとしても、男性がいやになったら、男性からの自由があったほうがよい。男性ではなくても、男性が良くなったら、男性への自由があったら、自分が好きなときに好きなように男性になれる。

 男性や女性では、その質を定めづらいのがあり、性の少数者でもそれは同じことだろう。たくさんの量があるものの質を定めるさいには、その量のぜんぶを調べつくすことはできづらい。ぜんぶの量に当てはまる質をげんみつに定めることはできないのがあり、質をささえる根拠が弱くなる。独断と偏見におちいりがちだ。定められた質が実証されずに反証される見こみがそれなり以上におきる。

 うそが証明できる可能性を持つことがいる。反証の可能性を持つことがいるのがあり、何かについての表象にはそれがいる。それそのもの(presentation)ではないのが表象だ。おおかれ少なかれうそが入りこまざるをえないのが表象であり、それを含めて、うそを証明できる可能性を持たないとならない。うそであれば、それは本当ではない、またはまことではないことになる。

 質を定めるさいには、それをできるかぎりていねいにやることがいるのがあり、宗教の団体がやっている質の定め方はあまりにもらんぼうだ。一面の質の定め方になっているのがあるから、改めることがいる。改めるようにして、主体(宗教の団体)から一方的に押しつけられたものを脱構築しなければならないのが、性の少数者の表象だろう。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『本当にわかる論理学』三浦俊彦 『クイア・スタディーズ 思考のフロンティア』河口和也 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『脱構築 思考のフロンティア』守中高明