中央銀行の独立性と、アベノミクス

 円安がおきている。一時的に一ドルが一六〇円にまで達した。

 円安で、物価高がおきていて、生活に苦しむ人たちが少なからず出ている。経済で悪いことがおきている。そのもとは、安倍晋三元首相のアベノミクスにあるのだろうか。アベノミクスのせいなのだろうか。

 お金の価値がなくなって行く。円安は、円弱だと言われているのがある。円弱になっているのは、安倍元首相によるアベノミクスが、中央銀行(日本銀行)のあり方をこわしてしまったのがひびいていそうだ。

 中央銀行をよしとするのではなくて、それを否定する。アベノミクスではそれがなされた。中央銀行の独立性をこわしてしまい、日本の国の手下みたいなものにしてしまったのである。国のしもべにしてしまった。

 じゃまなものを、いなくさせる。アベノミクスにとってじゃまだったのが、中央銀行の独立性である。アベノミクスのさまたげになってしまう。じゃまなものはいない方がよい。じゃま者をいなくさせるようにした。中央銀行の独立性がこわされてしまう。

 お金の価値の安定性を保つ。お金が価値をもつことを保証する。中央銀行がやるべきこととしてそれらがある。それらをやるためには、独立性をもっていないとならない。日本の国の手下やしもべになってはならない。国とのあいだに一定の距離をたもつ。距離がゼロになると、独立性がなくなってしまい、中央銀行がやるべきことができなくなってしまう。

 経済をよくして行く。経済をよくして行くのは大事だけど、それとは別に、原理にもとづくことが大事だ。原理として、中央銀行のやるべきことがあるけど、そこが日本は弱い。原理にもとづいていない。

 中央銀行の独立性は、原理に当たることだけど、それの大事さがきちんとふまえられていないのである。とにかく経済さえよくして行くようにすればそれでよいのだといったことになり、無原理や没原理のあり方になってしまう。原理なんかどうでもよくて、経済さえ良くなればそれでよいのだといったことになる。

 円安はよい。良いものである円安によって、経済をよくする。円安で、景気がよくなっている。そういうことが言われているけど、それとは別に、中央銀行のあり方は悪い。独立性がなくなってしまっている。原理が無いあり方になっている。

 アベノミクスをよしとするのは、それによって経済がよくなるとされているのとは別に、じゃま者をいなくさせることが良しとされるのもある。アベノミクスのさまたげとなるようなじゃま者をいなくさせることが良しとされた。

 中央銀行の独立性をなくす。国の手下やしもべにさせる。それを良しとしたのが、アベノミクスを支持した(支持している)人たちだろう。原理なんかどうだってよいのであり、とにかく経済さえ良くなればそれでよいのだとしたのである。経済が良くならなければ、何にもならない。

 さまたげやじゃま者がいないほうが良いのではなくて、いたほうが良かったのがアベノミクスだろう。さまたげがあったりじゃま者がいたりしたほうが、アベノミクスに抑えがきいた。円がそこまで安くならずにすんだ。円が弱くなりすぎるのを避けられたのである。

 成功したことによって、失敗した。それがアベノミクスなのかもしれない。さまたげやじゃま者をいなくさせることによって、アベノミクスをやることには成功したけど、抑えがきかなくなることによって失敗した。

 もしも抑えをきかせられていれば、アベノミクスをやることには成功しなかっただろうが、成功しないことによって、大失敗を防げた。アベノミクスが十分に成功しないことにより、大きな失敗をしでかさずにすんだのである。

 原理によらないものなのがアベノミクスだった。原理をひどく軽んじるものだったのである。アベノミクスから逆に浮かび上がってくることは、原理の大事さだ。中央銀行の独立性の大事さがあり、それをこわしてしまったことによって、抑えがきかなくなって、いまどんどん円が安くなっていて、円が弱くなっているのがありそうだ。

 なんでアベノミクスがよしとされたのか。なんで多くの人たちから支持を受けたのだろうか。なんでアベノミクスが成功したのかといえば、それは原理によらなかったからであり、原理をひどく軽んじたからだろう。日本は無原理や没原理なところがあるからだ。それによって成功はしたけど、成功したことで逆に失敗した。(アベノミクスをやることに成功するのではなくて)失敗したほうがよかったのがあり、抑えをきかせたほうが良かったのがアベノミクスだろう。

 参照文献 『「通貨」を知れば世界が読める “一ドル五〇円時代”は何をもたらすのか?』浜矩子(はまのりこ) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』森下伸也(しんや) 『資本主義から市民主義へ』岩井克人(かつひと) 聞き手 三浦雅士 『思考のレッスン』丸谷才一(まるやさいいち)