失敗する投資:万博は投資として見たら成功の確率が低い

 はたして、万博をやることは投資になるのだろうか。

 二〇二五年に関西で行なわれるのが、日本国際博覧会だ。

 かなり難しいものなのが投資することだろう。それに成功するよりも失敗する見こみのほうが高い。

 国が赤字をするのは原則としては禁じられている。その例外として、あとに残る建て物などは赤字が許されている。建設の国債だ。

 万博で建てた建て物は半年したらとり壊されるのだという。形としてあとに残るものではないから、赤字が出たさいに正当化することはできそうにない。

 主体についてを見てみると、国や大都市などの体制(establishment)は投資には向いていそうにない。すでに権力をにぎっている体制からはすぐれた発想が出てきづらいのである。多数派からよい案は出てきづらいのがあり、創造性が低い。

 反対の勢力(opposition)を排除するのが強いのが日本の国の政治だ。反体制(anti-establishment)を排除してしまっている。体制派や多数派だけでものごとを進めることが多い。体制では、世襲の政治家が力をもつ。それによって創造性が落ちてしまっているのである。

 すでにあるていどお金や労力をかけてしまっていると、とちゅうで引き返せなくなってしまう。埋没の費用(sunk cost)のさっかくだ。合理ではなくて不合理なことをしてしまう。

 不合理なことがとちゅうでわかったら、すばやく引き返す。そうできればよいけど、ぐずぐずしてしまい、ずるずるとやり続けてしまうことが多いから、不合理なことがなされてしまうのである。

 とちゅうで引き返すのは消極だ。消極なのがあるからそれをできづらい。あたかもやり続けるほうが積極であるかのようになってしまう。

 いかにすぐに引き返すことができるのかが大事だ。洋服の会社であるユニクロ柳井正(やないただし)氏はそう言う。見切りの値うちである。すぐに引き返せれば、受ける傷は浅くてすむ。ぐずぐずしていると、あとになって受ける傷が深くなるはめになる。痛手が大きい。不確実性への備え(contingency plan)がいる。受けることになる傷をできるだけ浅くするためのものだ。

 戦いは、はじめるのは簡単だが、やめどきが難しい。木に登ることでは、いったん木に登ったとして、そこから降りるのが難しくなる。木に登ったのはよいとして、そこから降りられなくなるのである。

 とり組んでいることへの参与(commitment)がどんどん上昇して行く。ゆでがえるの現象がおきる。不合理なほうにどんどんつき進む。下手をするとそうなってしまう。完全にお湯の中でかえるがゆで上がる。

 万博においては、それを良しとしているのが体制で、それに反対しているのが反体制だ。体制であるよりも反体制のほうが正しいところがあるのが万博だろう。体制よりも反体制のほうが創造性がより高い。体制派は、創造性が低い。

 疑わしいところが少なくないのが、万博を投資だととらえる見なし方だ。すごい利益になるものなのであれば、すごい危険性があることが少なくない。たいして利益にならないことなのであれば、危険性もそれだけ少ない。利益と危険性が相関しているのである。

 政治で何かをなすさいに、長期の視点にはよりづらい。長期の視点によるためには、法の決まりなんかをしっかりと守るようにしないとならない。いまの日本の憲法をしっかりと守って行く。

 法の決まりをやぶることが平気でなされてしまっているのがいまの日本の国の政治だ。憲法を軽んじていて、やぶってしまっている。短期の視点になっていることを示す。長期の視点によれていないのである。

 短期でもうかりさえすればそれで良い。いまの時点でお金になりさえすればそれで良い。あとのことなんかどうでも良い。目先の利益に目がくらむ。日本の国の政治はそうしたあり方でこれまで色々なことをやってきた。

 長期の視点をいちじるしく欠いてきた。日本の政治にはそれが見てとれる。国の財政の赤字など、負のものがすごくたまっているのである。自然の環境などの公共の資源や財(common pool)が大きく損なわれている。あとにまでとっておくべき財を食いつぶす。いまお金を手に入れるために、とっておくべき財をぎせいにしている。

 成功する事例はすごく少ない。失敗する事例がとても多い。国や大都市などの体制がなすことは、たいていは失敗することが多い。そこから良い発想が出てきづらいからだ。反体制からでないとなかなか良い発想は出てこないのがあるから、万博が投資なのだとしても、まず失敗すると見たほうがよさそうだ。

 きびしく見てみれば、万博は成功することはまずありえない。やり逃げのようになる。二〇二一年の東京の五輪と同じである。見通しの甘さなどの色々な甘さが見てとれる。体制派は甘やかされていて、甘えの構造になっている。

 参照文献 『考える技術』大前研一法哲学入門』長尾龍一超訳 日本国憲法池上彰(いけがみあきら) 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹 『創造力をみがくヒント』伊藤進 『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』西成活裕(にしなりかつひろ) 『組織論』桑田耕太郎 田尾雅夫 『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』橋下徹カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや) 『環境 思考のフロンティア』諸富徹(もろとみとおる) 『世襲議員 構造と問題点』稲井田茂(いないだしげる) 『どうする! 依存大国ニッポン 三五歳くらいまでの政治リテラシー養成講座』森川友義(とものり) 『一勝九敗』柳井正 『見切る! 強いリーダーの決断力』福田秀人(ひでと) 『山本七平(しちへい)の思想 日本教天皇制の七〇年』東谷暁(ひがしたにさとし)