政治家の原理:行動するための基盤(base)となるもの

 政治家が、原理(principle)をもつ。それによって政治家が行動を行なう。

 日本では、原理をもっている政治家が少ない。原理にしたがって行動する政治家は多くない。転向することがおきがちだ。大きくぶれてしまう。

 原理の点から、被災地にすぐに行った野党の政治家を見てみるとどういったことが見えてくるだろうか。

 能登(のと)半島で大きな地震がおきた。すぐに被災した地に野党の政治家は行ったけど、それは原理を持っていたことによる。原理にしたがった行動だったのである。

 災害がおきる。貧しい人たちが助けを求める。そういった場に、自分で足を運ぶ。助けの手をさしのべに行く。それを原理としていたのが野党の政治家だろう。自分のあり方としていた。

 原理を持っていない。それだと、場当たりや思いつきの胸三寸(むねさんずん)の行動になってしまう。そのときどきでころころ変わってしまう。

 原理を持っていれば、予測がなりたつ。予測することができることになり、こういうときにはこの政治家はこういう行動をするだろうといった見かたがなりたつ。予測の可能性(predictable)だ。

 日本は個人主義であるよりも集団主義なのがあるから、政治家が原理をもっていることがそう多くはない。原理によって言動することがなくて、予測がなりたちづらい。

 集団主義なのにくわえて、権威主義なのもある。主体性がしっかりとしていなくて、自我の不確実感をもつ。主体性にとぼしくて自我が不確実なのがあるから、そこから原理によらないあり方になってしまう。

 日本では自分が個人として原理を持ちつづけるのができづらい。それよりも、大きいものである日本の国にすがってしまう。アメリカにすがってしまう。大に事(つか)える事大(じだい)主義だ。

 超越の他者(hetero)にすがるのがある。他律(heteronomy)のあり方だ。何らかの強制にしたがって行動することだ。戦前だったら、超越の他者である天皇に動かされていたのが日本人だ。

 良いことを政治家がやったり言ったりすることは大事だけど、それだけではなくて、原理をもつ。そのことがいる。なぜそれがいるのかといえば、政治家が原理を持っていないと、仲間を作れないからである。原理をもっていないと、その人に対する予測ができづらいから、仲間ができづらい。

 個人主義によるようにして行く。それで、一人ひとりの政治家がそれぞれの原理をもつようにして行く。

 個人を重んじて行く。いまの日本の憲法では個人を重んじることがよしとされている。第一三条などによってである。

 政治家が原理をもつようにするさいに、大事にすることがいるのが憲法だろう。根本の価値として個人を重んじることが良しとされているのが憲法だから、個人が自分の原理をもつことが良しとされることにつながる。

 どんどん政治が右傾化していっている。それがいまの日本だろう。なぜ国の政治が右傾化して行っているのかといえば、日本には原理がないからだ。それが大きい。

 普遍(ふへん)にもとづくようにして行く。つねに当てはまる性質なのが普遍だ。憲法をだいじにすれば、普遍によることができやすい。そうではなくて、憲法をないがしろにして、それを守らない。こわす。憲法をだいじにしないと、特殊におちいってしまう。固有の性質なのが特殊だ。

 特殊さによりがちなのが日本だ。原理を持たないあり方である。

 あれかこれかがある。あれか、それともこれかの二つだ。あれからこれへといった転向がおきやすい。いま日本の国の政治で右傾化がおきているのは、あれからこれへの転向だ。これまではいちおう戦後の民主主義の体制だったのが、反体制の動きが強まっているのである。それが右傾化だ。

 あれからこれへの転向や、あれもこれものごちゃ混ぜの多神教のようなあり方になっている。あれかこれかや、あれもこれものあり方になっているのがいまの日本の政治だろう。そのなかで、憲法をできるだけ大事にして行く。特殊ではなくて普遍によるようにして行く。

 普遍では自由主義(liberalism)がある。中立な立ち場から判断する思想である。自由主義がこわれてしまっているのがあるから、それを立て直す。自由主義を大切にして行って、抑制と均衡(よくせいときんこう)をかけて行く。それぞれの個人が自由に自分が良しとする原理をもつ。政治家が自分の原理をもつようにして行く。それで予測が成り立つようにして行きたい。

 参照文献 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『憲法という希望』木村草太(そうた) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『中高生のための憲法教室』伊藤真(まこと) 『超訳 日本国憲法池上彰(いけがみあきら) 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『右傾化する日本政治』中野晃一(こういち) 『「戦争と知識人」を読む 戦後日本思想の原点』加藤周一 凡人会 『歴史を繰り返すな』坂野潤治(ばんのじゅんじ) 山口二郎 『日本人論 明治から今日まで』南博 『天皇論』鷲田小彌太(わしだこやた) 『山本七平(しちへい)の思想 日本教天皇制の七〇年』東谷暁(ひがしたにさとし) 『国体論 菊と星条旗白井聡(さとし)