中東の紛争への示威(じい)の運動が世界でおきている―示威の運動がなぜ起きているのか

 中東で、紛争がおきている。

 紛争がおきている中で、イスラエルは正しくて、パレスチナは悪いと言えるのだろうか。パレスチナイスラム原理主義の集団が悪いのだと見なせるのだろうか。

 アメリカや欧州の国なんかは、イスラエルは正しいのだとしている。パレスチナイスラム原理主義の集団が悪いのだとしていて、悪玉化している。

 国とはちがって、人々は、パレスチナを良しとする示威(じい、demo)の運動を行なっている。イスラエルパレスチナガザ地区に非人道の軍事の行動をやっていることへの批判の声が世界の各地であげられている。

 たしかに、イスラエルは、被害を受けているところがある。パレスチナイスラム原理主義の集団から、イスラエルは攻撃を受けている。その一面が、事実としてあるのは確かだ。

 なんで、世界のいろいろな国の人々が、イスラエルの非人道の軍事の行動を批判する示威の運動を行なっているのだろうか。パレスチナの人々を救うために、世界の人々が声をあげているのだろうか。

 アメリカなんかの国が、イスラエルをよしとして、パレスチナを悪玉化しているのは、思想の傾向(ideology)だ。かなり強いかたよった思想の傾向をもっているのがアメリカなんかの国である。

 現実と離れてしまうことになる。アメリカなんかの国は、イスラエルを良しとすることによって、現実から離れてしまっている。思想の傾向が強いとそうなってしまう。現実とのあいだにみぞが開いてしまい、そこに批判の声がおきることになるのである。世界の人々が、示威の運動をやって、声をあげているのは、みぞが開いていることを示す。

 現実とのあいだにみぞが開いてしまうのがあるから、アメリカなんかの国が持っている思想の傾向へ、批判を行なう。それが必要だ。

 因果関係からの議論がある。修辞学にはそれがあり、それによってイスラエルパレスチナを見てみたい。

 議論の型(topos)で見てみると、たとえば、中国なんかは、なにか悪いことがあると、他国のせいにする。悪さを、他国になすりつける。責任の転嫁(てんか)だ。中国はしばしばそういったことをやる。これは、因果関係でいえば、原因の外への帰属のさせ方だ。状況の要因だ。

 イスラエルパレスチナの紛争では、イスラエルパレスチナを悪いと見なす。これは、中国が、他国に悪さをなすりつけるのと同じことだろう。

 悪さをなすりつけられて、悪玉化されているのがパレスチナだ。パレスチナイスラム原理主義の集団を悪いものだとするのは、パレスチナへの、原因の内への帰属である。個人の要因である。

 どういうふうに、原因を帰属させるかがある。帰属のさせ方をしばしばまちがってしまう。まちがいが起きがちなのがあり、よくやりがちなのは、原因の内への帰属や、個人の要因で見てしまうものである。基本の帰属の誤り(fundamental attribution error)だ。

 まちがいが起きがちなのをできるかぎり避けるようにしたい。まちがいを避けるようにしてみると、イスラエルが、悪いことの原因を外へ帰属させるのや、状況の要因にするのは、必ずしも正しいことだとは言えそうにない。イスラエルにも少なからず悪いところがあるのだから、悪さを引き受けるべきだ。

 原因の内への帰属や、個人の要因で見なされているのがパレスチナだろう。アメリカなんかの国からそう見なされている。それを改めるようにして、原因の外への帰属や、状況の要因で、パレスチナを見ることがいる。

 外への帰属化や、状況の要因で見てみると、パレスチナが悪いとは必ずしも言い切れず、イスラエルによって暴力をふるわれているのがあるものだろう。物理の暴力だけではなくて、構造の暴力をふるわれている。

 貧困や抑圧や差別などが、構造の暴力だ。戦争がないのは消極の平和である。(戦争がないことに加えて)構造の暴力がないのが、積極の平和だ。学者のヨハン・ガルトゥング氏による。

 よくやりがちなまちがいをできるだけ避けるようにしたい。悪者だとされているのがパレスチナだけど、原因の帰属のさせ方がまちがっている見こみがある。内部の帰属化や、個人の要因で見てしまっているのがあり、それによってその人(や集団)が悪者だとされてしまっていることがある。そうしたさいには、脱構築(deconstruction)をすることがいる。

 構築されたものを、一から作り直す。それが脱構築である。だれかが構築した見なし方などを脱構築する。因果関係において、原因の帰属のさせ方を、変えてみることがあったほうが良い。

 参照文献 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信構築主義とは何か』上野千鶴子編 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫脱構築 思考のフロンティア』守中高明 『クリティカル進化(シンカー)論 「OL 進化論」で学ぶ思考の技法』道田泰司 宮元博章 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『象の鼻としっぽ コミュニケーションギャップのメカニズム』細谷功(ほそやいさお) 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし)