山本太郎氏は、悪いことをやったのか―国会で、悪い行動をしたのか

 国会で、暴力をふるった。それでばつが下される。野党であるれいわ新選組の代表の山本太郎氏にたいしてである。

 暴力と見なすのは大げさであり、物理の行動にとどまるのがあるかもしれない。

 国会でのふるまいにたいして、山本太郎氏にばつが下されることを、どのように見なせるだろうか。

 山本太郎氏へのばつについては、分析によってとらえてみたい。

 分析によるようにして、事実と価値の二つを分けるようにしたい。

 事実としては、山本太郎氏が国会において物理の行動をとったのがある。それを大げさに見なせば、暴力をふるったのだとされている。

 事実は、何々である(is)に当たるものだから、それぞれの人によってちがった見なし方にはなりづらい。

 価値は、何々であるべき(ought)に当たるものだ。それについては、人それぞれでちがったとらえ方になる。

 山本太郎氏がやった行動なのだから、それは正しい。そうしてしまうと、事実から価値をみちびくことになり、自然主義の誤びゅうにおちいってしまう。

 山本太郎氏を支持している支持者や、れいわ新選組を支持している支持者だと、自然主義の誤びゅうにおちいりかねない。山本太郎氏がやったこと(言ったこと)であれば、それは正しいことなのだとしてしまうおそれがある。そうしてしまうのは避けたいところだ。

 色々なことをやったり言ったりしているのが山本太郎氏だ。色々なことを政治においてやったり言ったりしているが、それらの範ちゅうの中には、さまざまな価値を含む。すごくよい価値を持つものもあれば、そうではないものもある。ぜんぶがよい価値だとは言えないし、ぜんぶが悪い価値だとも言えそうにない。

 事実と価値を分けないで、それらをいっしょくたにしてしまうと、山本太郎氏が政治でなしていることの範ちゅう(集合)の中のものは、ぜんぶがよい価値のものだとしてしまうことになる。それは行きすぎだろう。

 事実と価値をいっしょくたにしないで分けたほうが、範ちゅうの中に、よい価値もあれば悪い価値もあるととらえることがなりたつ。このとらえ方のほうがよりおだやかだ。きょくたんにおちいりづらい。

 ことわざでは、弘法も筆の誤りとか、さるも木から落ちると言われる。それと同じように、山本太郎氏であったとしても、政治でなすことの範ちゅうの中に、もしかしたら悪い価値が含まれるかもしれない。ぜんぶがよい価値であるとは言い切れないかもしれない。

 まじめに政治をやっていて、ついつい熱が入りすぎてしまうことが山本太郎氏にはあるものだろう。それは山本太郎氏が政治にきちんとたずさわっていることのしるしではあるだろうが、総合(包括)ではなくて分析で見たさいには、どこかに落ち度があることがありえる。

 人それぞれで、色々に見なしてもよいのが、山本太郎氏がなしたことだ。価値については、人それぞれで色々に見なしてもよいのがあるから、山本太郎氏が国会でなしたこと(暴力をふるったとされていること)を、頭から丸ごと否定しないでもよいかもしれない。

 政治家の中では山本太郎氏はかなりまともでましな方だ。ひどかったり悪かったりする政治家は、とりわけ与党である自由民主党なんかの中にはいっぱいいる。それらをさしおいて、山本太郎氏やれいわ新選組がとくに標的(target)にされているところがありそうだ。

 何かすごいとんでもなく悪いことをしたかのように、山本太郎氏のなしたことが構築されているところがあるかもしれないから、そうであるとすれば、それは脱構築(deconstruction)されることがあったほうがよい。

 かりに、山本派(山本太郎氏の支持者)と、反山本派がいるとして、山本派は山本太郎氏をもち上げすぎている。反山本派は悪く見なしすぎている。中間がない。すごく好きか、すごくきらいかといったふうに極化している。それだとあまりよくないから、上方への構築(上げ底の構築)と、下方への構築の、どちらについても、脱構築することがいる。ちょうどよいふう(just なふう)にはなかなかなりづらい。

 それにたいしてあまりに思い入れが強すぎると、上方への構築をしすぎてしまうことがある。そのさいには、引いてみて、冷めた目でいまいちど見直してみることが役に立つ。

 誰にでもまちがいはつきものであり、合理性の限界(限定された合理性)をもつ。すごいとんでもなく正しい政治家だといったように、基礎づけたりしたて上げたりすると、あまり良くない。そこまでやってしまうと、政治家を象徴化(symbolize)することになる。

 参照文献 『脱構築 思考のフロンティア』守中高明構築主義とは何か』上野千鶴子編 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき) 『本当にわかる論理学』三浦俊彦現代思想を読む事典』今村仁司編 『政治家を疑え』高瀬淳一 『ポリティカル・サイエンス事始め』伊藤光利