日本と台湾と、友だち作り―日本や台湾は、どこと友だちになるべきなのか

 中国と、戦うかくごを持つべきだ。日本の政治家は台湾においてそう言った。

 いざとなったら台湾は中国と戦うべきなのだろうか。台湾の味方である日本やアメリカとともに、中国と戦い合うことがいるのだろうか。

 台湾と中国は対立し合う。それとはちがい、台湾と日本は友だち同士だ。与党である自由民主党麻生太郎元首相は、それを漫画のワンピースになぞらえたという。

 台湾に行ったさいに麻生元首相は漫画のワンピースを持ち出した。主人公のルフィは、友だちを裏切らない。それで仲間を増やして集団の長になれたのだという。

 台湾と日本が、お互いに裏切ることがない友だち同士なのだとしても、それで十分だとは言えそうにない。友だち同士なのは、お互いに近いものどうしであるのを示す。遠近法(perspective)でいえば、近いものどうしではなくて、遠いものどうしの関わり合いが重みを持つ。遠いものを近づけて行く。

 どことどこが友だち同士になるのかでは、台湾と日本だけではなくて、中国と日本も友だち同士になればよい。台湾と中国が友だち同士になって行く。そうすれば、日中の友好がなりたつし、中台の友好がなりたつ。

 一人でよいから、そこの国の人と友だちになる。一人でよいから、そこの国に友だちを作る。それが国どうしの友好にとって有効なのだと知識人の加藤周一氏はいう。

 対立し合う国どうしだったら、その国どうしでお互いに友だちを一人でよいから作るようにする。台湾と中国だったら、台湾人が中国人の友だちを作り、中国人が台湾人の友だちを作るようにする。そうするようにすれば中台の友好がなりたちやすくなる。

 いま戦争をやり合っているロシアとウクライナであれば、ロシア人がウクライナ人の友だちを作り、ウクライナ人がロシア人の友だちを持つ。自国と対立している国に友だちを作ってあれば、その国と戦争をやるのを少し避けやすい。

 たとえ台湾と日本が友だち同士なのだとしても、それは遠いものどうしなのではない。(どちらかといえば)近いものどうしなのがあるから、そこまで大きな価値を持たない。大きな価値をもつためには、遠いものを近づけることがいる。

 日台のような、近いものどうしなのだと、内部結束(bonding)するだけにとどまる。内部の結束が強まるのは正だけではなくて負のところをもつ。外部を排除するのが強まりかねない。外部とのあいだの橋わたし(bridging)をして行く。客むかえ(hospitality)だ。いかに外部の遠い他者とのあいだに橋わたしをできるかが平和にとって重みを持つのがあり、外部の遠い他者を客むかえをするのが大切だ。

 中国はどうするべきなのかといえば、台湾とのあいだで外交をやって行く。台湾は中国の内なる外といったものなのがあり、内における外部だ。外交であるよりは、内交をやって行く。中国だけではなくて、どこの国であったとしても、内における外部がいるのがあり、外交と共に内交をしっかりとやって行かなければならない。内政(への干渉)であるよりも(それだけではなくて)、内交をやらないとならないことが浮かび上がってくる。

 参照文献 『ひとりでいいんです 加藤周一の遺(のこ)した言葉』加藤周一 凡人会 『歴史家が見る現代世界』入江昭現代思想を読む事典』今村仁司編 『アイデンティティ(identity) / 他者性(otherness) 思考のフロンティア』細見和之(ほそみかずゆき) 『十三歳からの日本外交 それって、関係あるの!?』孫崎享(まごさきうける) 『ブリッジマンの技術』鎌田浩毅(ひろき) 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき)