台湾は、戦う覚悟をもつべきなのか―台湾とその仲間の国(日本やアメリカなど)は、中国と戦うべきなのか

 戦うかくごをもつべきだ。日本の政治家は、台湾に行って、そう言った。

 台湾と中国が対立している。そのなかで、台湾を守るために、日本やアメリカなどが味方につく。いっしょになって中国と戦う。それが東アジアの地域の抑止力になるのだという。

 自由民主党麻生太郎元首相が、台湾で戦うかくごを持つべきだと言ったことを、どのように受けとめられるだろうか。

 戦うことの逆は何なのか。それを見てみたい。非戦や不戦だろう。日本は国として不戦の誓(ちか)いをして、いまにいたっているのがある。そのちかいを、いまいちど思いおこすようにしたい。

 台湾は(中国と)戦うかくごをもつべきだとした、麻生元首相の見解(view)は正しいものなのだろうか。見解を、そのまま丸ごとうのみにはできそうにない。疑うことがなりたつ。

 いまの日本の憲法を見てみると、三つの大きな主義として、平和主義が言われている。前文で言われているものである。平和の生存権を国民はもつ。国民がもつ平和の生存権が損なわれないようにして行く。日本でも台湾でもそれがいる。

 なんで台湾が中国と戦うことがいるのかといえば、正義のためだろう。正義のために戦うのは、正戦論だ。たとえ自分の国を守るためなのだとしても、戦うことありきになってしまうと、正戦論になりかねない。

 正しさのために戦うのであるよりも、たとえうそやいんちきであったとしても平和のほうがよい。たとえ偽ものであったとしても、戦争にならずに平和であったほうがよい。諦観(ていかん)の平和主義だ。

 とんでもなく強い軍事力をもつのが中国なのだから、そうした中国と戦うのであるよりも、戦わないで平和を選んだほうがよい。そう見なしてみたい。平和主義によるようにして行く。諦観の平和主義によるようにする。

 政治は可能性の芸術(技術)だ。可能性をできるかぎり探るようにしていって、台湾と中国が共に仲よくして行けるように、客むかえ(hospitality)をして行く。友好になるようにして行く。台湾と中国が連帯(友愛)することができるのをさぐる。日本はそれをうながすようにして行きたい。

 現実論としては、無差別戦争観がある。対立し合う国どうしが戦争をし合うことがおきてしまう。台湾と中国だったら、それらの国(地域)どうしのあいだで戦争がおきかねない。現実論としてはそれがありえるから、無差別戦争観の見なし方はまったく意味がないものではない。

 ほかの戦争観としては、違法戦争観がある。これは軍事の力(hard power)ではなくて文化の力(soft power)だ。

 麻生元首相の見解は、軍事の力によるものだろう。その見解を批判するようにして、文化の力によるようにして行く。違法戦争観によるようにして行きたい。

 たとえ違法戦争観によるのだとしても、たとえばロシアとウクライナのあいだで戦争がおきたではないか。そう言われてしまうのがあるかもしれないが、文化の力はいがいとけっこう大きな力をもつ。

 麻生元首相の見解は、いまの日本の憲法を完全に無視しているものであり、憲法を否定してしまっているものだ。それだと文化の力によることができない。憲法を十分に重んじるようにして、文化の力をうまく使って行きたい。

 日本は国として不戦のちかいをしているのがあり、それでいまにいたっている。いまの日本の憲法にもそれが平和主義や憲法の第九条なんかにこめられているのがあり、それの重みがある。

 国の中だけではなくて、国の外にも自国の意思を示すことになるのが、不戦のちかいだ。われわれの国は非戦や不戦でやって行きますとの意思を国の外に示せば、自国がもつ大前提となる価値観を他国にしめせる。それによって、他国との戦争を避けるようにして行く。

 いまの日本の憲法をじゅうぶんに重んじて行く。憲法に反映されている、かつての日本の国の大きな失敗をふり返るようにして行く。憲法にもとづいてやって行くようにして行かないと、麻生元首相のような見解(反憲法の見解)によることになってしまう。

 麻生元首相のような反憲法の見解は、日本の国の歴史の忘却であり、歴史の軽視だ。負の歴史を忘却したところでなりたつものだろう。そこに危なさを見てとりたい。できるかぎり日本の国の負の歴史を想起して行くことがかんじんなことだろう。

 参照文献 『戦争の克服』阿部浩己(こうき) 鵜飼哲(うかいさとし) 森巣博(もりすひろし) 『憲法という希望』木村草太(そうた) 『歴史 / 修正主義 思考のフロンティア』高橋哲哉 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『法哲学入門』長尾龍一 『うたがいの神様』千原ジュニア 『歴史を繰り返すな』坂野潤治(ばんのじゅんじ) 山口二郎 『ねじれの国、日本』堀井憲一郎 『十三歳からの日本外交 それって、関係あるの!?』孫崎享(まごさきうける) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『日本の「運命」について語ろう』浅田次郎