ロシアの、戦争への認識のしかたの悪さ―戦争観の悪さ

 いま戦争をやっているロシアは、いったいどのような戦争のとらえ方をしているのだろうか。

 ロシアは、戦争は正義であるとする、正戦論によっている。そこが悪い点だ。

 戦争のとらえ方では、三つあり、正戦論と無差別戦争観と違法戦争観だ。

 無差別戦争観は、正義は置いておくとして、それとは関わりなく、現実として戦争が起きてしまうことがあるのだとするものである。

 のぞましいのは、ロシアがもしも違法戦争観によっていれば、戦争をおこすことはなかった。平和が保たれていたはずだ。

 ロシアと戦争をやっているウクライナはどうかといえば、ウクライナも正戦論によってしまっているところがありそうだ。ロシアと戦うことは正義であり、ロシアにうばわれた土地をとり返す。ロシアは悪であり敵だから、そのロシアとの戦いは正義だとしてしまっているところがウクライナにはあるだろう。

 なにが批判されるべきなのかといえば、じっさいにロシアがやっている悪い行ないに加えて、ロシアの戦争への認識も批判されることがいる。ロシアは正戦論によってしまっているから、そこから戦争が起きているのがある。

 ほかの国を見てみると、アメリカは新保守主義(neoconservatism)なんかは正戦論によっているのがあるから、よくないあり方だ。ロシアと同じ戦争観を持っているのがアメリカの新保守主義だろう。ともに悪い戦争観を持っているのがロシアとアメリカだ。

 中国は、ロシアやアメリカと同じように、正戦論によっていて、台湾を支配しようとしている。正義のためであるのなら、武力の行使(戦争)をやるのは正しいのだとしている。自分たちがやる武力の行使は正しいものなのだとしている。

 アメリカにくっついていっている日本は、のぞましい戦争観を持っているとはいえない。正戦論や無差別戦争観によってしまっている。

 ロシアを批判して、ウクライナを助けているのが日本ではあるが、日本はのぞましい違法戦争観をきっちりと持っているとはいえないから、よくないあり方だ。

 よくない戦争観を持っているのがロシアやアメリカや中国だけど、それらの国を批判することができていないのが日本だ。それらのうちでロシアを批判しているのはあるけど、アメリカを批判できていないのが日本だ。アメリカが持っている悪い戦争観を日本は批判しないといけないけど、それができていない。

 あくまでも悪いのはロシアであるのはたしかだけど、ロシアと戦っているウクライナもまたロシアと同じように正戦論によってしまっているのがあり、ロシアに引っぱられて(影響されて)いるところがあるかもしれない。

 おたがいに戦争をやり合っていると、そこに相互作用がはたらく。おたがいに交通し合ってしまうのがあり、ロシアの悪さが、ウクライナにもおよび、ウクライナも悪くなる。負の影響を与え合うあいだがらになり、負の交通がおきてしまう。

 自国は正義であって、正義のために戦争をやっているのだとする点では、ロシアとウクライナはたがいに共通点がありそうだ。そうなると、正戦論による国どうしが戦争をやっていることになる。どちらの国も、自国が正しいのだとしていて、戦争と(自国の)正議を結びつける。

 正義は価値だけど、価値を抜きにして、たんにいまロシアとウクライナのあいだで戦争が起きてしまっているのだと見なすのは、無差別戦争観によるものだ。現象として、いまロシアとウクライナの戦争がおきているのだと見なす。

 現象としていま戦争がおきているのだと見なすだけだと、価値のことがとり落とされてしまう。いまおきている戦争にたいして、どういった価値を持つべきなのかといえば、違法戦争観をもつべきだろう。

 価値についてでは、ロシアが悪くて、ウクライナは善だから、そのウクライナがロシアと戦うのは正しくて良いことだとするのもある。ウクライナを主体として、そのウクライナが悪いロシアと戦っているのはよいことで正しいことだから、ウクライナが戦うことを手助けする。そういう価値の持ち方だと、正戦論(または無差別戦争観)になってしまうから、のぞましい価値の持ち方とはいえそうにない。

 どういう価値をもつのがのぞましいのかでは、違法戦争観によるのがよいけど、人それぞれでいろいろに自由に価値の持ち方をとれるのがある。いろいろに自由に価値の持ち方をとれるのはあるけど、世界から戦争をなくして、平和によるようにするためには、違法戦争観によるのでないとだめだろう。正戦論や無差別戦争観によってしまうと、戦争をやることに価値があるのだとしてしまうから、戦争が無くならない。

 参照文献 『戦争の克服』阿部浩己(こうき) 鵜飼哲(うかいさとし) 森巣博(もりすひろし) 『本当にわかる論理学』三浦俊彦 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき)