日本の芸能界の性の被害と、社会の問題―社会の問題の克服までの、すすみ具合(のおそさ)

 日本の芸能界では、性の被害が言われている。男性による男性への性の被害があったとされる。

 芸能界で性の被害が言われているのを、どのように見なすことができるだろうか。

 国の外から、日本に調査する人がやって来た。国際連合の人権(fundamental human rights)をになう部署の人たちが、日本の人権の侵害を調べに来たのである。その中の一つとして、日本の芸能界における性の被害が調べられた。

 国連が日本のありようを調べにやって来たことで、段階が少し進んだ。過程(process)についてを見てみるとそうできるのがある。なんの段階なのかといえば、社会の問題を何とかするさいのすすみ具合だ。

 社会の問題を何とかするさいに、はじめの状態から、理想の状態までのあいだがある。はじめの状態は、まだ何も片づいていない。そこから、そのことに関わる人が声をあげる。声をあげることによって、段階が一つ進む。

 関わっている人たちが声をあげただけでは、はじめの状態よりは進んでいるけど、理想の状態にまではまだいたっていない。山のぼりでいえば、地上から一合目くらいまではいたっているけど、頂上である一〇合目までにはいたっていない。

 日本の国の中だけだと、たとえ関わっている人たちが声をあげたとしても、押さえこまれてしまう。黙殺されてしまう。そういったことがしばしばあり、はじめの状態から少し進みはしても、そこでのび悩んでしまう。とどまってしまう。理想の状態にまでいっきょに進んで行きづらい。

 あまり人権の侵害に強い関心がもたれない。日本はそうしたありようなのがあり、社会の問題としてとり上げられづらい。やっとのことで、勇気をふりしぼる形で、関わっている人たち(被害者の人たち)が、日本の芸能界の性の被害について、声をあげられた。

 国を超えて見てみれば、国連の人権の部署は、人権の侵害にとくに強い関心をもつ。さまざまな国での人権の侵害にとくに特化して関心を持っているのがあり、その中で日本の国における人権の侵害に焦点が当てられた。

 人権がないがしろにされるところがあるのが日本であり、それが必ずしも重んじられていない。たとえ人権が侵害されたとしても、社会の問題になりづらいのがあり、はじめの状態から理想の状態まで段階がどんどん進んで行きづらい。かりに関わっている人が声をあげられたとしても、とちゅうの段階でのび悩みがおきてしまうことがめずらしくない。

 どうしてとちゅうの段階でのび悩んでしまうのかといえば、被害者をおもんばかるのであるよりも、強者(加害者とされる人)をかばってしまうことがあげられる。強者をよしとしてしまうのがあり、それによって、段階が前に進みづらくなる。強者はよくて、弱者が悪いみたいな図式になってしまう。

 国の外からやって来たのが国連の人たちであり、日本の国の中での強者をおもんばからない。強者との関係はとくにないから、それにしばられない。強者との関係が切れたところで、日本の国における人権の侵害のありようを調べられる。強者との関係を抜きにして行動することがなりたつ。国の外から来たことの強みとして、強者の顔を立てることがとくに必要ないのである。

 いっぱんの話からすると、あらゆる社会の問題が、いっきょに片づいたほうがよいとはいちがいには言い切れそうにない。人それぞれによって、どういったことが社会の問題なのかがちがうのはいなめない。人によって、どういったことに強く関心をもち、どういったことに関心が向かないのかがちがう。その人の利害が少なからず関わることになるのが、関心の向き方だ。

 強者に甘くて、弱者にきびしい。弱者に冷たい。そういったところが(とくにさいきんの)日本にはあって、それが見てとれるのが、日本の芸能界での性の被害だろう。強者に甘いから、社会の問題があったとしても、それが片づきづらい。はじめの段階から、少し段階が進んだとしても、とちゅうでのび悩む。理想の状態までたどり着きづらい。段階が進みづらい。

 政治家の票(やお金)にならないようなことは、たとえそれがすごい大事なことであったとしても、日本ではものごとが前に進んで行きづらいのがある。政治家の票やお金になることだったら、たとえそれが悪いことだったりどうでも良いことだったりしたとしても、ぐんぐん前に進んで行く。がんがんどしどし前に進んで行く。とちゅうの段階で止めるべきだとしても止まらない。悪い加速度がつくのである。

 参照文献 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『社会問題の社会学赤川学 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『創造力をみがくヒント』伊藤進 『法律より怖い「会社の掟」 不祥事が続く五つの理由』稲垣重雄 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『公共性 思考のフロンティア』齋藤純一 『憲法主義 条文には書かれていない本質』南野森(しげる) 内山奈月現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修