集団の安全性と危険性―安全性(軍事の力)を高めることと、危険性への傾斜

 日本の国を守って行く。国の防衛にかける費用を増やして行く。防衛にお金をかければかけるほど、より日本の国は安全になるのだろうか。

 防衛を強めて、強兵の政策にして行く。軍事の力(hard power)を高めて行けば、ますます日本は安全になるのかといえば、そうとは言い切れそうにない。

 日本の安全を高めようとしていながらも、危険性への移行(risky shift)がますます進んでいっている。

 集団の心理では、集団がどんどん危ない方向に走って行きやすいのがあるとされる。それがおきているところがあるのがいまの日本だろう。

 いま戦争をやっているロシアなんかでも、危険性への移行がおきていて、それのなれのはてが、戦争をやっていることにうかがえる。

 もしもロシアが集団としてかしこければ、ウクライナに戦争をしかけるのを防げただろう。集団がおろかになってしまったことで、戦争をやることになった。集団の浅慮である。

 ロシアではウラジーミル・プーチン大統領が独裁者になっていて力をもっているけど、それだと集団に危険性への移行がおきやすい。力が分散されていないと、集団のなかで人権の侵害がおきたり、統治(governance)のあり方にまずさがおきたりしてしまう。抑制と均衡(checks and balances)がかからない。自由主義(liberalism)がこわれてしまう。

 ロシアと同じように、日本でも集団に危険性への移行がおきている。いま日本が円安になっていて、物価高(inflation)になっているのは、危ない方向に向かってつっ走ってしまっているのが見てとれそうだ。

 日本の中央銀行日本銀行は、国の政治の権力とは距離を保って、抑制と均衡を保つことが役としているけど、それがかからなくなっている。日銀は国と一体化してしまっていて、距離がとれていないから、危険性への移行がおきていて、それでいま円安になり、物価高がおきているのがあるかもしれない。

 いまのロシアがやっているほどには、いまの日本では人権の侵害がたくさんおきているのではないだろうけど、いまの日本のなれのはての姿が、いまのロシアだと見なせそうだ。

 危険性への移行や集団の浅慮によって、いまロシアは戦争をやっているのがあるけど、それと同じ道に進んでいっているのが日本だろう。いまの日本が行きつく先に、いまのロシアがある。それとともに、いまのロシアは、戦前の日本をほうふつとさせるのもある。

 戦前の日本のおろかさと、戦前のアメリカのおろかさをほうふつとさせるのが、いまのロシアだろう。かつての日本のおろかさと、かつてのアメリカのおろかさを合体させたのが、いまのロシアのおろかさだ。かつてのアメリカのおろかさとしては、日本に原子爆弾を二個ほど投下したのがあるけど、いまのロシアは、いまやっている戦争で、核兵器を使うのをほのめかしている。

 安全にしようとすればするほど、危険になっていってしまう。集団ではそれがおきるのがあり、国の防衛ではその危なさがある。安全を高めるために、軍事の力を強めていっても、それによって危険性がますます高まって行く。集団に危険性への移行がおきてしまうからだ。

 いま円安が進んでいるのが日本だけど、いまよりももっと円安が進んでしまうと、国のはめつにいたるような危なさがおきるかもしれない。安倍晋三元首相が、経済の政策で、円安にするのは良いことだとして、それを強くおし進めたことが、いまの日本の苦しさをまねいている。

 いま日本にいることは、安倍元首相によってなされたものである、集団の危険性への移行や集団の浅慮を少しでも食い止めて改めることだろう。自由主義がこわされているのを回復させて、抑制と均衡をしっかりとかけて行く。国がまちがった方向に向かってつっ走って行くのを少しでも防いで行きたい。

 ロシアや日本だけにかぎらず、いまはどこの国でも、集団がおかしな方向に向かって行きやすい。うその情報(fake news)がどんどん作られて、それが流されて、集団がへんな方向に向かって行く。集団のなかで個人の心脳が操作されやすい。いろいろな国でそれがおきている。

 ロシアや日本だけにかぎらず、いろいろな国で、集団がかしこくなくておろかになりやすくなっている。あとになってひどくこうかいするようなことを、集団がなしてしまいやすくなっていて、日本ではその危なさがとくに高まっている。

 安倍元首相の政治が、集団の危険性やおろかさを高めたのがあり、集団を酔わせた。集団に酔いをおこしつづけていた。そうとうに強い酔いを集団におこしたのが安倍元首相だったのである。それがいまに悪くひびいていて、負の遺産として残りつづけていて、酔いからさめづらい。そこがやっかいだ。

 参照文献 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『憲法主義 条文には書かれていない本質』南野森(しげる) 内山奈月 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『心脳コントロール社会』小森陽一 『情報政治学講義』高瀬淳一 『逆説の法則』西成活裕(にしなりかつひろ)