日本の防衛費が増えてもしかたがないのか―防衛費を増やすのはやむをえないことなのか

 ロシアが日本に攻めてくる。中国が攻めてくる。日本は防衛費を増やして、国を守るようにしないとならない。

 いまはロシアや中国の拡張主義などがあることから、日本は防衛費を増やすべきなのだろうか。日本の防衛費が増えてもしかたがないのだろうか。

 国債つまり借金をしてまでも、防衛費を増やすべきだと言っているのが、与党の自由民主党安倍晋三元首相だ。

 日本の防衛をより高めて行くといったさいに、すぐに防衛費を増やすことが言われるが、そこは直結するとは言い切れそうにない。

 防衛を高めるさいに、軍事の力(hard power)であるよりも、文化の力(soft power)を見て行きたい。

 文化の力はいがいとあなどれない力をもつ。無力とはいえず、それなりに力があると言えるのがあるから、文化の力を高めることで防衛の力を高めることもできるだろう。

 すぐに税金をかけて、または借金をしてまで、防衛費を増やして行くようにせずに、文化の力を見直したい。

 文化の力では、国際連合(United Nations)や国連の憲章があげられる。ロシアが戦争をやって国際的に批判されているのは、文化の力の点からそれが行なわれているのがある。

 ロシアの戦争に正当性がないのは、文化の力の点から見てのものだ。正義では、形式の手つづきのものがあるけど、ロシアは形式のところがとても弱いので、ロシアの行動は国際的な支持を得られていない。

 国連で、いろいろな国からの合意を得ずに、一国の単独の行動をおこしたのがロシアであり、国連憲章に反したことをやった。ロシアの戦争は、形式の支えがないから、国際的に批判をあびているのである。

 無力なようでいて、あらためて見るといがいと効力があり、効いているのが文化の力だろう。大国なのがロシアだけど、そのロシアであっても、文化の力をないがしろにして、それを軽んじた行動をとると、自国に損や害がおきる。自国が不名誉をこうむる。悪い国なのがロシアなのだといった評判が世界をかけめぐる。悪い知らせはすぐに広まる(Bad news travels fast.)。悪い評価は一般化されやすく、よい評価は限定化されやすい。

 けっこうな悪評をこうむっているのがロシアだろう。それによるロシアの損や害は見かたによってはそうとうに大きなものだろう。ロシアが文化の力をないがしろにして軽んじたことのむくいである。

 力をもった大国であるロシアのような国をふくめて、どのような国であったとしても、文化の力を軽んじた行動をとることはできづらい。文化の力をふまえない行動をとると、自国が大きな損や害をこうむるおそれが大きい。

 国の財政が借金だらけで、まったく財政にゆとりがないのが日本だ。財政がとんでもなく苦しいのだから、防衛費を増やすのではなくて、減らすようにして行き、軍縮して行く。軽武装にして行く。

 よほど財政にゆとりがあるときでさえ、軍事にお金を使うのは強く批判されるべきだ。軍事にお金をかけるとその国を苦しめることになる(財政がきびしくなって行く)。いまの日本は財政にまったくゆとりがないのだから、財政にゆとりがあるときよりもなおさら軍事にお金をかけるべきではない。ゆとりがあるときですら良くないことは、ゆとりがないときにはなおさらだめだ。日本の財政のきびしい現実から目をそらさずに、きびしさを直視するべきだ。

 日本の経済が大きく成長したときは軽武装の路線だった。軍事にお金をかけないあり方だった。軍事ではなくて、文化の力でやるようにすれば、お金をあまりかけないですむから、経済の合理性が高い。

 ロシアは文化の力が弱い国だが、そのいっぽうで、アメリカは文化の力が高い面をもつ。現実のアメリカは軍需の産業が支配してしまっているが、そのいっぽうで文化の力による正義による面を持っているのもあるので、日本はその面をとるようにしたい。

 アメリカには悪い面があるが、それを見習ってしまっているのが日本だろう。よい面ではなくて悪い面を見習ってしまっている。アメリカの悪い面では、戦争の文化があり、戦争への強迫の観念(obsession)をもつ。

 いまの日本は、やたらに外からの危機や危険をあおり、戦争への強迫の観念がおきているが、もっと日本の国の中のいろいろなまずさを見て行くべきだ。日本の国の中はそうとうにがたがたになっていて、ぼろぼろになっている。日本の国の中のまずさとしては、個性の否定や、階層(class)の格差や、上からの監視や情報の統制などがある。

 参照文献 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『憲法という希望』木村草太(そうた) 『ゴジラと日の丸 片山杜秀の「ヤブを睨(にら)む」コラム大全』片山杜秀(もりひで) 『憲法が変わっても戦争にならない?』高橋哲哉斎藤貴男編著 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや)