ロシアの戦争と、二〇世紀のあり方―二〇世紀の古い集団のあり方から転じることがいる

 いま戦争をやっているロシアを集団として見たらどう見なせるだろうか。

 国としてのロシアは古い二〇世紀の集団のあり方だ。その古い二〇世紀の集団のあり方によって、ロシアは国として失敗を引きおこした。国が戦争を引きおこす大きな失敗がおきた。

 資本主義による、大量生産と大量消費によるのが二〇世紀のあり方だ。その集団のあり方が通じづらくなっている。大きな集団が力をもち、上から引っぱって行くようなあり方が二〇世紀と同じようにはなりたちづらい。

 学者のトマ・ピケティ氏によると、資本主義では階層(class)の格差が広がりつづける。格差が広がってしまうのは、資本利益率 r がつねに経済成長率 g を上回るからだとされる。

 格差が広がらずに縮まったゆいいつの例外が二〇世紀の真ん中あたりだという。いまはそのゆいいつの例外のときではなくて、そのときがすぎて二十一世紀に入っている。格差が広がりつづけることになる。それが資本主義の通常のありようだからだ。

 産業社会や生産中心主義のときとはちがい、脱産業社会(post-industrial society)においては、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のような人物は、上に立つのにはそぐわない。プーチン大統領のような力をもった人が、大きな集団の上に立ち、集団を上からごういんに引っぱって行くのは、脱産業社会においてはなじまないものだ。

 大きな集団において、どういう人が上に立てばよいのかがわからなくなっている。上に立つ人を選びづらいのが脱産業社会だ。人を選べない。人を選ぶのに困難がおきているのがあり、その中でまちがってプーチン大統領のような人物が選ばれているものだろう。

 大きな集団があることの正当性がどんどん失われている。自明性が失われている。二〇世紀の真ん中あたりの産業社会や生産中心主義のときであれば、大きな集団がある意味あいはあった。大量生産と大量消費をなして行くことがいり、一つの標準の型を当てはめて行く。男性が優で女性が劣といった一つの標準の型を全体に当てはめて行く。画一化されたあり方だ。

 例外のときは別として、放っておくとどんどん格差が広がっていってしまうのが資本主義だから、二〇世紀のあり方による大きな集団は、そうとうにまっとうなあり方でないと失敗をしでかしやすくなる。どのようにして古い二〇世紀のあり方からちがうあり方に転じられるのかが求められている。

 失敗をしやすくて、悪さをしやすいのが、二〇世紀のあり方による大きな集団だ。ロシアが戦争を引きおこしたことにそれが見てとれる。ロシアにかぎらず、世界では古い二〇世紀のあり方の国が多い。そこから世界で戦争がおきる危険性がおきている。

 このまま世界において古い二〇世紀のあり方の国が多いままであれば、世界で戦争がおきることになり、国どうしが争い合うことになりそうだ。悪貨は良貨を駆逐することになり、グレシャムの法則がはたらき、へんな人やまちがった人が選ばれて上に立ってしまう。ロシアではそれがおきているのがあり、日本でもそれがおきているし、中国でもおきているし、アメリカでもおきている。フランスでもそうなりかかっている。

 脱産業社会では、人を選びづらくて、どういう人を選んだらよいのかの客観のものさしをとりづらい。よくない人が選ばれてしまいやすい。首をかしげるような人が選ばれてしまう。大きな集団において、へんな人が選ばれて上に立ちやすくなっているので、大きな集団が失敗をしでかすことがおきやすくなっている。大きな集団の中のあり方がおかしくなっていて、そこからへんな人が選ばれて上に立ち、へんな聖化のされ方がおきる。

 まともでしっかりとした人が集団の中で下方に排除されて辺境に置かれてしまう。おかしい人やへんな人ほど集団の中で上方に排除されて中心化され、聖化される。集団の中における排除の力学がへんなはたらき方をしているのがあり、集団の中で中心化される人ほどおかしくて、辺境に置かれる人ほどまともだといった逆転の現象がおきやすい。

 ロシアではプーチン大統領は中心化されているが、政治家としてはていどがきわめて低い人物だ。フランスなんかでも、ていどの低い極右の政治家が中心化される動きが強まっている。大きな集団の必要性がどんどん低くなっている中で、その中からへんな人物が選ばれて中心化されやすくなっているから、そこを改めるようにして行きたい。下方に排除されて辺境に置かれる辺境者をいかにむかえ入れることができるのかが、大きな集団の狂いを少しでも修正するさいのかぎだ。

 参照文献 『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』金田信一郎 『個人を幸福にしない日本の組織』太田肇(はじめ) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『貧困と格差 ピケティとマルクスの対話』奥山忠信 『社会を結びなおす 教育・仕事・家族の連携へ(岩波ブックレット)』本田由紀