座りこみの、意味論や語用論(実際論)―記号の内容や、当事者の立ち場を見てみる

 座りこみをやっているところに行ったら、それがやられていなかった。だれもいなかった。だまされたのだとの感想が言われている。

 毎日において座りこみをつづけている沖縄県の現場のところに行ったら、そのときにはたまたまだれも座りこみをやっていなかった。それはだまされたことになるのだろうか。

 意味論として見ると、座りこみの記号が、どういった内容をあらわしているのかがある。その記号の表現が、どういった記号の内容をもっているのかだ。

 その記号が何を内容として指示しているのかがあり、その指示しているものに当てはまればそれが真実であることになる。当てはまらなければ偽になる。

 おなじ座りこみの記号を使っていても、その内容がお互いに合っているとは限らない。おなじ記号を使っていて、ちがう内容を指示していることがあるから、そのさいには、何が真実で何が偽なのかがちがってくる。

 何々は何々であるの言明(命題)があって、その言明については真偽がどうかを見て行くのがなりたつ。座りこみであれば、誰々がやっていることは座りこみであるとする言明や、誰々がやっていることは座りこみではないとする言明をとれる。それらの言明が真実なのか偽なのかを見て行くことがなりたつ。

 座りこみの記号そのものは、一つの単語だから、それそのものに真実か虚かはないものだろう。いったい、そもそもどういったことが座りこみに当たるのかは、大前提となる価値観だ。

 そもそもどういったものを座りこみだと見なすのかは、大前提の価値観だから、そこが互いに合っていないと、おたがいに価値観を合わせられていないことになる。

 二十四時間において座りこみをやっていないから、座りこみをやっているとは言えないことになるのかどうかは、大前提の価値観がどうなっているのかに左右される。大前提の価値観しだいでは、たとえ二十四時間において座りこみをやっていなかったとしても、それを座りこみだと言える見こみがある。

 完ぺき主義による、減点の方式のあり方だと、まず完ぺきなあり方があって、そこからどれくらい非や不備があるのかで、点数を引いて行く。

 不完全主義による、加点の方式のあり方であれば、まず〇点からはじまって、そこから一点ずつ点数を下から積み上げて行く。

 いくつかの段階があって、なにもやらない、何もやらないよりは少しはましな何かをやる、何かを完ぺきにやる、といったものがある。

 下から段階をたどると、何もやらないのは〇点で、それよりは少しは加点されるのが、何もやらないよりは少しはましな何かをやることだ。

 〇点であるのが、何もやらないことであり、一〇〇点であるのが、何かを完ぺきにやることだ。〇点か一〇〇点かだと、きょくたんなあり方だ。〇点でなければ一〇〇点で、一〇〇点でなければ〇点だとするのは、離散(digital)のものである。

 連続(analogue)の見かたで見ると、〇点から一〇〇点までのあいだに、いろいろな点数がある。〇点か、それ以外かといった分け方もできる。〇点でなければ、一点より以上であり、一点より以上のものは、〇足す n 点である。〇足す n 点であるのにおいては、一点だろうが一〇〇点だろうが同じだと見なせなくもない。

 一〇〇点の座りこみか、それとも〇点ではない座りこみかのちがいがある。一〇〇点の座りこみによるのだと、一〇〇点でなければ〇点であることになってしまう。完ぺき主義だ。〇点ではない座りこみだと、〇点(〇時間、〇分、〇秒)でなければ座りこみをやっていることになる。

 たとえ一〇〇点の座りこみをやったからといって、それでどうかなるのではないだろうから、その動機づけ(motivation)はおきづらい。一〇〇点の座りこみでなければならない理由はとくにないから、完ぺき主義によるのではなくて、不完全なものによるのが現実的だろう。

 完ぺき主義による一〇〇点の座りこみをやったとしても、それによって誰かからほめられるわけではない。それでねらっている目的がまちがいなく達せられるのではないから、やってもやらなくてもそれほどのちがいはない。

 それをやったらうんとお金を得られるとか、うんとほめられるのとかがなければ、外発の動機づけはおきづらい。座りこむことそのものに、強い興味や関心を持っている人はいないだろうから、内発の動機づけもおきづらい。

 やっていてそんなに楽しいものではないのだし、それそのものにすごく意味や価値があるものではないのだから、座りこみには内発の動機づけがおきづらいのがある。外発と内発の、どちらの動機づけもおきづらいものだから、一〇〇点の完ぺきな座りこみをやるのは、自然なことだとはいえそうにない。不完全ないい加減な座りこみのほうが人間らしいものである。

 参照文献 『本当にわかる論理学』三浦俊彦記号論』吉田夏彦 『人を動かす質問力』谷原誠 『学ぶ意欲の心理学』市川伸一