共産党は、無くなったほうがよいのか―無くなったほうが日本は良くなるのか

 無くなったほうがよい政党なのが、共産党だ。野党である日本維新の会の代表は、日本共産党についてそう言ったという。

 維新の会の代表が言うように、共産党は無くなったほうがよいのだろうか。

 自然主義の誤びゅうにおちいっているのが維新の会の代表だろう。

 何々であるの事実と何々であるべきの価値を分けるようにしたい。

 共産党があるのは、何々であるの事実(is)に当たることだ。そこから、何々であるべきの価値(ought)を自動では導くことができない。

 人それぞれによって色々に見なすことができるのが価値についてのことだ。共産党を良しとする人もいれば、良しとはしない人もいる。日本の国の中には色々な考えを持つ人がいるから、こうであるべきだといちがいには決めつけられそうにない。

 ある人にとっては良いものでも、別の人にとっては悪い(One man's meat is another man's poison.)。維新の会にとっては共産党は悪いものなのだとしても、ほかの人にとってみれば良いものであることがある。

 維新の会は、それが政党としてあることは事実だけど、良いか悪いかは価値に当たることだから人それぞれだ。よい政党なのが維新の会だとする人もいるだろうし、悪い政党なのが維新の会だとする人もいる。

 無いほうが良いのだとしてしまうと、行きすぎだ。歯止めがかかっていない。民主主義によるようにするのであれば、とちゅうで歯止めをかけるようにしたい。歯止めがかからないと、民主主義から横すべりして専制主義や独裁主義におちいってしまう。

 とちゅうで歯止めをかけるようにすることがいるのが民主主義だ。自分が良しとはしない政党があるのだとして、そこには段階がある。良しとはしない、きらい、すごくきらい、ものすごくきらい、見るのもいやだ、無くなってほしいといった段階がある。

 いちばん最後の段階まで行ってしまうと、それそのものが無くなったほうがよいのだとしてしまう。民主主義がなりたたなくなってしまう。民主主義だったら、それがあることは認めて、承認することがいる。否認してしまうと、それがあることすら認めないことになってしまう。あってはならないのだとしてしまうから、やりすぎだ。

 それがあることは承認するようにして、あってもよいのだとする。そのうえで、対立することになるのであれば、そこには政治があることになる。対立がなければ政治はないのだから、対立し合うものどうしで政治をやって行く。民主主義ではそれがいる。

 かりに維新の会が共産党の立ち場であるのだとして、自分の政党が、無くなったほうがよいのだとされたら、受け入れられそうにない。自分の政党はあってもよいけど、きらいな政党はなくなったほうがよいのだとするのは、普遍化できない差別だろう。

 自由主義(liberalism)からすると、右派から左派までのどの政党もあってよい。右から左までどの政党もあってもよくて、どの政党も日本の全体を代表していない。日本の部分(part)しか代表していないのが政党(political party)なのだから、その点ではどの政党もみんな共通点をもつ。

 中立な立ち場から判断する思想なのが自由主義だ。与党である自由民主党(第一自民党)と維新の会(第二自民党)だけでよいのだとするのは、右にかたよりすぎだ。右があるのなら左もあるといったようにつり合いをとるようにしないと中立になりづらい。

 右へ右へとどんどん行っているのが日本の政治だ。左の受け皿がない。左の受け皿をいっさいなくそうとするのは、きょくたんすぎる。右と左のどちらの受け皿もいる。共産党は左の受け皿としてとてもきちょうだ。左から右へといったような悪いぶれ方(転向)をしづらいのが共産党である。

 国としてみると、共産党とはちがって、日本は転向がおきやすいのがあり、右へ右へと行っている。国として悪いぶれ方(転向)がおきているのが日本である。何かとすぐにぶれてしまうのである。だらしがない。日本は共産党(共産党のぶれづらさ)を見ならうべきだ。

 参照文献 『本当にわかる論理学』三浦俊彦 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『右傾化する日本政治』中野晃一 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』佐藤優 井戸まさえ 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『リーダーは半歩前を歩け 金大中(きむでじゅん)というヒント』姜尚中(かんさんじゅん) 『十三歳からのテロ問題―リアルな「正義論」の話』加藤朗(あきら) 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『増補 靖国史観 日本思想を読みなおす』小島毅(つよし) 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『政治の見方』岩崎正洋 西岡晋(すすむ) 山本達也