いま税金を払って、日本の軍事を強めるべきなのか―税金で軍事を強めるのは良いことなのか

 未来の日本人に、ふたんを押しつけてはならない。いまを生きている日本人が、責任を負う。軍事のために使うお金を、いまの日本人の税金によって支払わないとならない。岸田首相はそう言う。

 軍事の力(hard power)を高めて行くのに使う税金を、いまの日本人が支払うべきなのだろうか。

 いったい、だれが利益を得ているのか。だれに、不利益が押しつけられているのか。そのように問いかけてみたい。この問いかけは、不利益の分配の政治によるものだ。

 財政を見てみると、日本はものすごい借金をかかえている。不利益が、未来の日本人にすごい押しつけられているのだ。利益を得てきたのは、これまでの日本人といまの日本人だ。目先の利益に目がくらみつづけてきていまにいたっているのが日本だ。

 いまの時点を見てみると、不利益を押しつけられている人や地域がある。原子力発電所や、アメリカの軍事の基地が置かれている地域には、不利益が押しつけられている。あるところに不利益を押しつけて、それが固定化されている。それによって、ほかのところは利益を得ている。

 ちゃんとした不利益の分配の政治をやっていないから、日本の中で、利益を得ている人や地域があるいっぽうで、不利益を押しつけられている人や地域がおきている。

 すすんで自分が不利益を引き受けて行く。すすんで自分が負担をして行く。みんなでそういうふうにできれば、不利益をみんなに広く分配することになり、みんなで不利益を引き受け合うことがなりたつ。

 原発アメリカの軍事の基地に見られるように、みんなで公平に不利益を引き受け合うようにはなっていないのが日本のあり方だろう。不公平になっているのがあって、それが固定化されていて、改まる見こみが立っていない。

 引き受けなくてもよい不利益(税金)のひっとうに当たるのが、軍事のためにかけるお金だろう。軍事にお金をかけてしまうと、たとえそれを(借金をするのではなくて)いまの日本人の税金で支払ったとしても、未来の日本人に利益にならず、不利益になる。

 軍備を縮小して行く。拡張するのではなくて、縮小して行くようにすることが、いまの日本人の利益になることであり、また未来の日本人の利益にもなる。

 国の抑圧の装置なのが軍事の力だから、軍事にお金をかけてしまうと、抑圧がどんどん高まっていってしまう。国の公が肥大化していってしまう。個人の私がやせ細って行く。

 アメリカの軍事の産業がうるおう。アメリカや日本の軍と産の複合体がうるおうことになるだけなのが、軍事にお金をかけることだ。死の商人のような、よくない産業がうるおうだけになるから、日本人に利益にはならず、不利益をこうむる。

 こしたんたんと、だれに不利益をおしつけてやり、どうやって少しでも自分たちが利益を得られるのかがねらわれている。不利益の分配の政治が行なわれているのがいまの日本だから、気を許すことができないことになっている。気を許していると、かんたんに、自分に(税金などのかたちで)不利益が押しつけられてしまうし、ほかの人が利益を得てしまう。

 軍事にかけるお金は、いらないものだから、それが必要ではないことを言って行く。必要さがねつ造されているのを言って行きたい。必要さがねつ造されていて、じっさいには必要がないものなのだから、許容してはいけないのが、軍事にかけるお金だ。軍事で引き受けさせられる不利益(税金)は、許容の範囲の外に置かないとならない。それを許容させられてしまうと、自分が不利益を受けることになるし、未来の日本人も不利益を受けることになり、だれも得しそうにない(悪い産業だけは得をする)。

 それを引き受けることが必要な不利益があり、必要さがあるのだから、許容することがいる。そうしたものは、自分が特権を受けているものだ。自分が特権を受けているのなら、それを手放す。そういうふうにして、不利益を自分が引き受けて行く。そういうふうにできればよいけど、うまいかたちで不利益の分配の政治がなされていないのが日本だ。特権をなかなか手放したがらない。

 特権を手放させるのは困難さがあって、そうとうに高度な不利益の分配の政治をなさないとならず、そうとうに高度な言葉の力を政治家が持っていないとならない。日本の政治家は、言葉の力が低いことが多くて、語る力が弱い。語ることへの動機づけ(motivation)が低い。それで、不利益をこうむることになってしまっている人や地域がおきている。不利益をうけて、救われないのや、苦しむのや、悩むのや、困ることになる人や地域がおきている。

 参照文献 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『「不利益分配」社会 個人と政治の新しい関係』高瀬淳一 『公私 一語の辞典』溝口雄三現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『絶対に知っておくべき日本と日本人の一〇大問題』星浩(ほしひろし)