消費税と、得るものと失うもの―得るもの(利益)についての話と、失うもの(不利益)についての話

 消費税を下げたりなくしたりすることがいると言われているのを、どのように見なすことができるだろうか。

 不利益の分配の政治の文脈から消費税を見てみたい。その文脈から見てみると、不利益(give)と利益(take)の二つの点をもち出せる。

 どのようにみんなにうまく不利益を分配して行くのかがあるのが、不利益の分配の政治だ。そこでもち出されるのはもっぱら不利益(give)だ。利益(take)の話ではない。

 みんなに利益を分配できる、利益の分配の政治ができているときであれば、政治はやりやすい。それができなくなっていて、不利益の分配の政治が避けられなくなっているのがいまの日本であり、政治の難しさの度合いが引き上がっている。

 政策論として、消費税を下げたりなくしたりすれば、日本の経済はよくなるのだとするのは、利益(take)の話になっている。不利益(give)の話ではなくなってしまっているのだ。

 たとえ、消費税を下げたりなくしたりしたのだとしても、どのみち、不利益(give)の話は避けられない。けっきょくのところ、不利益がどこまでもついて回り、それがどこまでも追いかけてくる。何をやっても、どこまで行っても、いずれにしても、不利益の話が避けられない。

 不利益の話が、どこまでもついて回ることになってしまうのは、不利益の押しつけになるからだ。だれにも不利益を押しつけないことができるのではなくて、だれかに不利益を押しつけることになってしまう。不利益をだれに押しつけるのかの、押しつけ合いの闘争を避けられないのである。

 たんに、利益(take)だけを得られるのであれば、利益の分配の政治ができていることを示す。たんに利益を得られるのであれば、それに越したことはないけど、それができなくなっているのがいまの日本だろう。不利益(give)なくして利益(take)なしとなっている。

 不利益と利益がつり合っていないことがおきているのがあり、日本では、アメリカの軍事の基地が、沖縄県にとくに押しつけられている。日本の本土は、沖縄県にとくに不利益を押しつけて、そのことによって利益だけを得ている。

 軍事の基地のほかには、原子力発電所も、地方に不利益を押しつけて、都会が利益だけを得ている。

 不利益の分配が適正でないものが中にはあり、不当になっているのがあるから、それを改めないとならない。本土や都会は、いま不利益を引き受けていないから、それを改めるようにして、いままで引き受けてこなかった不利益を、これからは引き受けて行かないとならない。

 中には、不利益を引き受けすぎているところ(沖縄県や地方)があるし、利益を引き受けすぎているところ(本土や都会)がある。それらを改めて行くのは、不利益の分配の政治をやって行くことだ。不利益(give)にまつわる話をやって行くことである。

 景気がよいものなのが利益(take)にまつわる話だけど、それをやるだけだと都合がよすぎるのがおきてくる。景気がよくない話なのが不利益にまつわる話だけど、それをやることによって、日本が抱える不平等の構造などがとらえられるのが利点だ。

 本土や都会が優の階層(class)になっていて、沖縄県や地方が劣の階層になっているのがあるから、そういった不平等は改めて行くことがいる。

 景気がよい、利益にまつわる話をやったとしても、それによって階層の格差の不平等が改まる保証はない。格差や不平等は温存されたままで、日本の全体がよくなるといったような話になってしまう。たとえ全体がよくなったとしても、格差や不平等はありつづけることがあり、富のこぼれ落ち(trickle down)が下の階層にまで届かないことがある。

 利益(take)の話ではなくて、不利益(give)の話をやらないことには、格差や不平等を改めることにはつながりづらい。格差や不平等を改めて行くためにも、不利益の分配の政治をやることがいるけど、それをやるのはすごくむずかしさがあって、政治の難易度がいまはすごく上がってしまっているのが日本の現状だろう。

 むずかしさはあるけど、そこから逃げられず、(影のように)どこまでもついて回ってくるのが、不利益の話だろう。うまく逃げられたと思えたとしても、逃げ切れるものではなくて、不利益の分配の政治をまともにやらざるをえない。

 いままで持っていた特権を、手ばなして行く。自分からそれを手ばなして行く。それができればのぞましいのが、不利益の分配の政治においてはある。優の階層である、本土や都会や、性では男性が、いままでもっていた自分たちの特権を手ばなして、不利益(give)を引き受けるようにして行く。特権を手ばなすようにして、脱構築(deconstruction)ができればよい。

 参照文献 『「不利益分配」社会 個人と政治の新しい関係』高瀬淳一 『社会階層 豊かさの中の不平等』原純輔(じゅんすけ) 盛山(せいやま)和夫 『それでも生きていく 不安社会を読み解く知のことば』姜尚中(かんさんじゅん) 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『テロリズムと日常性 「九・十一」と「世なおし」六十八年』加藤周一 凡人会