日本の防衛と、日本にとっての光と影―日本の戦後においての光と影と、東西の冷戦の体制(paradigm)

 日本の国を守る。そのために、増税をして行かないとならないのだろうか。

 増税をして、日本の軍事を強めて行く。そのさいに、日本においての光と影が関わってきそうだ。この光と影は、日本の戦後におけるものだ。

 光に当たるのがアメリカだ。アメリカは日本にとっての(国外の)天皇に当たる。アメリカは超越の他者(hetero)だ。アメリカに動かされているのが日本だから、日本は他律(heteronomy)のあり方になっている。

 何らかの強制にしたがって行動をすることなのが他律だ。超越の他者であるアメリカに日本は動かされていて、日本には自由がない。ねじれているのが日本であり、依存や従属をしつつ自立をなそうとしている。アメリカへの従属によって、アメリカから自立しようとしていることが、学者の内田樹(たつる)氏によって言われている。

 光はアメリカだけど、影は何なのかといえば東洋だ。日本にとって影のところに当たるのが東洋だから、そこにうとい。

 東洋の中でもとくに日本がうといのが、朝鮮半島だろう。

 戦後の冷戦の体制(paradigm)のときは、朝鮮半島の北と南の分断が、固定化されていた。いまはそれが流動化してきていて、北と南が統合に向かっていっているとの説が言われている。長い目で見ると、北と南は統合へと向かっていっているという。

 冷戦が崩れていなくてそれが生きていたときには、朝鮮半島の北と南の分断が固定化していて、それが自明なことだった。うたがわれることがない不可疑(ふかぎ)なことだった。西洋の哲学の弁証法でいえば、正と反とが分かれていて、合にいたる見こみがうすかった。

 いまは冷戦が崩れてずいぶん経っていて、朝鮮半島の北と南の分断が自明ではなくなっているところがあるという。弁証法でいえば、正と反が分かれているのが、合に止揚(aufheben)される見こみが少しおきている。

 日本のあり方は、戦後において、アメリカを光として、東洋を影としている。そのあり方は、冷戦が崩れていなくて生きているときには有効だったけど、いまは冷戦が崩れているから、有効性を失っているところがある。アメリカにやられていて、食いものにされているのが日本だろう。アメリカにだまされているところが日本には少なからずあるものだろう。

 形態(gestalt)の心理学の図がら(figure)と地づら(ground)では、アメリカが図がらで、東洋が地づらだったのが戦後の日本だ。冷戦のときはそれでよかったかもしれないが、いまは冷戦が崩れているから、それが通じなくなっているところがある。

 これまでの図がらと地づらを逆にするようにして、地づらだった東洋を図がらにして行く。東洋を図がらにするようにして、日本はもっと東洋を見て行くようにして行く。とりわけ朝鮮半島のことをしっかりと見て行くことが、冷戦が崩れたいまにおいていることだろう。

 生きている神さまだとされていたのが天皇だけど、戦前の日本人はそれにだまされた。天皇は不可疑だったけど、それによって日本人はだまされたのである。それと同じように、戦後においてアメリカは不可疑にされているけど、そのことで日本人はだまされてしまう。戦前に天皇にだまされたのと同じように、戦後にアメリカにだまされるのだ。

 頭からぜんぶを否定したり、完全に手を切ったりすることはいらないけど、アメリカを可疑にするようにして、うたがっていったほうがよいだろう。うたがっていったほうが、日本がアメリカにだまされづらくなる。冷戦が崩れたいまにおいては、アメリカを信じるのではなくてうたがっていったほうが良くなっているところがある。

 日本がやるべきなのは、アメリカを信じ切ることだとはいえそうにない。光であるアメリカを信じつづけるのではなくて、影である東洋をしっかりと見るようにして、東洋に光を当てて行く。朝鮮半島の北と南の分断を統合するようにして、弁証法の合の止揚にいたらせて行く。日本は、朝鮮半島を合の止揚(北と南の統合)にいたらせるように努めて行かないとならない。

 ねじれてしまっていて、アメリカに従属しながらそこから自立しようとしているのがあるから、日本は主体性をもちづらい。日本が主体性をもって、朝鮮半島を合の止揚にいたらせるように努めて行くのは、日本のねじれが関わってきてしまうからなかなか簡単ではなさそうだ。

 ねじれがあるから、主体性を持ちづらいのはあるものの、日本がやるべきことの一つとしては、歴史において、歴史修正主義をやめるようにすることだ。日本がもつ負の歴史に、きちんと向き合うことがいる。日本の負の歴史と向き合わないでいられるのが、アメリカを光とすることだけど、それができる代わりに、その代償が大きくなっているのが、冷戦が崩れたいまの時点だろう。

 日本が負の歴史と向き合わないでいられる代償として、アメリカから日本は思い切りだまされてしまいそうだ。アメリカを光とするのだと、薬と毒の転化(pharmakon)がおきてしまい、アメリカがすごい強い毒に転じてしまいかねない。

 参照文献 『朝鮮半島と日本の未来』姜尚中(かんさんじゅん) 『歴史 / 修正主義 思考のフロンティア』高橋哲哉 『国体論 菊と星条旗白井聡(さとし) 『街場の平成論』内田樹編 『岩波小辞典 心理学 第三版』宮城音弥(みやぎおとや)編 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『ねじれの国、日本』堀井憲一郎構築主義とは何か』上野千鶴子編 『うたがいの神様』千原ジュニア 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『アジア / 日本 思考のフロンティア』米谷匡史(よねたにまさふみ)