選挙で勝てなくなることに危機感をもつだけでよいのか―もっと根本に危機がある

 われわれは危機感を持たないとならない。与党である自由民主党の前首相は講演のなかでそうしたことを言ったという。東京都の都議会議員の選挙で自民党がそこまでよい結果を得られなかったことを受けてのものである。

 危機感をもつべきだとしたのが前首相だが、いまの自民党に見うけられるまずさとはいったい何だろうか。いろいろにあるのは確かだが、危機管理ができていないのがある。危機に対応できていなくて、危機から逃げつづけている。

 いまの自民党天皇制の国体のあり方とおなじようになっているのがある。

 いまの自民党天皇制の国体と同じようになっていて、上が守られるために下が切り捨てられている。天皇制では、天皇を守るために国民が切り捨てられた。国民の命がひどく軽んじられた。天皇との距離が遠くて、下に行けば行くほど軽んじられたのである。

 国体を守ることがいちばんに優先されて、国民のことなどどうでもよいとする。それと同じようになっているのがいまの自民党だろう。自民党のなかで上にいる政治家を守るために、下の政治家や役人が切り捨てられる。

 党の中で上にいる政治家がいつまでもいつづけられるのは、下にいる者が切り捨てられていることによる。ほんとうは上の政治家がいちばん責任を負わなければならないが、日本の政治は無責任の体制になっているために、上の政治家が責任を負わないようになっている。

 党の中でまっさきに政治家を辞めさせられるべきは上の政治家だ。いざとなったさいに責任を十分に負うべきなのが上の政治家だが、上がそれを負うかわりに下が負う。ほんとうであれば上の政治家がまっ先にいなくなっていなければならないのが、いつまでもいつづけることになっている。

 党の中で上の政治家が守られるために下の者が切り捨てられる。これは天皇制でいうと、天皇が守られるために国民の命をひどく軽んじることに通じる。国体を守ることがいちばん大事であり、そのためには国民に命を捨てさせる。

 きびしく見られるとすれば、党の中の上の政治家は、ほんらいは政治家を辞めているべきであり、まっ先にしりぞいているべきものだろう。上が責任を負うべきときにしっかりと負うことがいる。それが行なわれていなくて、上が守られて下が切り捨てられている。上はいてはいけないはずであり、すでにいなくなっているべきだが、いつまでもいつづけているのだ。

 戦争に負けたあとになっても、昭和天皇は戦争の責任を十分に負わずに、天皇制が温存されつづけてしまった。上の者がいなくなっていなければならないのが、いつまでもいつづけていたのである。アメリカがしむけたことではあるが、天皇制がなした悪いことが十分にとり上げられないままでいまにいたっている。

 戦後の日本はアメリカとの談合によっていたとされる。アメリカとのゆ着による。戦後に東西の冷戦がおきて、日本はアメリカの側にくみ入れられた。日本を支配するのに都合がよいものとして天皇制があり、アメリカはそれを活用した。アメリカとの取り引きによって天皇制が温存されることになった。

 戦争に負けたあとで日本はアメリカの時代になった。戦後の時点から日本ではアメリカの時代がはじまったのである。アメリカこそが光だとされるようになった。戦争のあいだはアメリカやイギリスは日本の敵とされていて、鬼畜米英と言われていた。戦争のあいだと戦争のあととで、あり方がひっくり返ったのである。

 戦後においてはお手本として見ならうべきものがアメリカになった。西洋のいろいろな国がある中で日本ではイギリスとアメリカにより重きが置かれている。イギリスやアメリカは社会民主主義(social democracy)よりも新自由主義(neoliberalism)が強くて、日本でもそれが見られる。新自由主義では自己責任がいわれる。

 戦後の日本が豊かになったのは、日本とアメリカが談合していたからであり、日本だけの力によるのではない。日本の国がすごいから日本が豊かになったのではなくて、アメリカの助けがあったのが大きいのがある。日本の国の外のおかげによるのがある。

 豊かになったのはよいものの、アメリカとの関係で、沖縄県に大きな負担が押しつけられつづけている。沖縄や日本のまわりの朝鮮半島などとのあいだに、これまでの過去にまつわることからくる問題を日本は抱えつづけている。日本の国にとって都合がよいように歴史を修正してはいけないものだろう。

 天皇制や国体のあり方に見られるように、日本の国は汚れが中にたまりつづけやすいようになっている。汚れが中にたまりつづけて行き、それが外に吐き出されづらい。上が守られて下が切り捨てられる。いまの自民党の中にもそれが見られるのがある。汚れを外に吐き出すことがいるのがあり、そのためには党の中の上の政治家がいなくなるべきだろう。いなくなっていなければおかしいのだと見なしたい。少なくとも、もっと政治の責任を上が十分に負い、いろいろな政治の責任をしっかりと上が引き受けることがいる。

 参照文献 『危機を避けられない時代のクライシス・マネジメント』アイアン・ミトロフ 上野正安 大貫功雄(おおぬきいさお)訳 『教育勅語を読んだことのないあなたへ なぜ何度も話題になるのか』佐藤広美森毅(たけし) 『反ナショナリズム姜尚中(かんさんじゅん) 『日本史の考え方 河合塾イシカワの東大合格講座!』石川晶康(あきやす)