総裁選と、日本とアメリカとの関係

 総裁選で候補者どうしが競い合う。与党である自由民主党では総裁選が行なわれるが、そこでとり上げられないとならないことにはどういったものがあるだろうか。その一つに日本とアメリカとの関係がある。

 総裁選では、候補者がどれだけアメリカとの距離をとれるのかが重要である。アメリカとどれくらい距離をとるつもりなのかが大事だから、そこをとり上げることがいるが、それがとり上げられていない。

 ただたんにこれまでと同じようにアメリカにべったりとくっついて行き、アメリカと一体化していればそれでよいとはならなくなっている。げんに、そうしたあり方をしつづけていることによって、アメリカからすらも日本は見下げられているのがありそうだ。アメリカからすらも日本は見切られてしまっていて、軽べつされていそうだ。うわべのおべっかは置いておくとして、日本はアメリカの言いなりになってしまっているから、国としてそんなに尊敬されているとは言えそうにない。

 自民党のあり方を見てみると、前首相のありようからもわかるように、ただたんにアメリカにくっついて行きさえすればそれでうまく行くといったあり方がとられてきている。アメリカとの距離が近ければ近いほどよいといったあり方がとられてきた。

 協調の一辺倒となってきたのが日本とアメリカとの関係性であり、そこにいちじるしく欠けているのが対立だ。協調の一辺倒であることがよいことなのだといったようになっているが、じっさいにはいろいろな穴が空いている。その穴におおい(cover)のフタがされているのだ。

 アメリカとの距離を近づけて、ぴったりと一体化しようとする。そうした政治家が自民党の中では上の地位に行きやすい。そこに自民党のあり方のまずさの一つがあると言えそうだ。協調の一辺倒になっているところにまずさがある。

 対立するようにしてアメリカと距離をとろうとする発想が自民党にはない。アメリカとの距離の近さにおうじて価値をもつことになっている。このあり方を改めるようにして、アメリカと一定より以上の距離をとることに価値があるのだといったようにして行く。

 日本とアメリカとの関係は、国内でいうと、天皇制のあり方になぞらえられる。天皇制では天皇との距離が近いほど価値があるのだとされた。国内で天皇に当たるのを国外ではアメリカに置き換えられる。天皇アメリカとの距離が近ければよいのではなくて、一定より以上の距離をとらざるをえなくなっている。

 いまの国内では、かつてのように天皇制が絶対化されているわけではないから、天皇制と距離をとることがいるよりも、自民党と距離をとることがいると言える。一強となっているような時の政治の権力と距離をとって行く。自民党に丸投げしておまかせするような政治のあり方ではよくない。

 戦前や戦時中は、天皇制において天皇との距離をまったく取らなかったことによって大きな失敗を日本はおかした。天皇との距離をとることの自由がまったくなかったことによって日本の国の内や外で大きな害や損を生んだ。距離をとらないあり方が大きなわざわいをもたらしたのである。

 これまでのあり方をかえりみてそれを反省して行く。自民党アメリカと距離が近くてぴったりと一体化していさえすればそれでよいのだとしてきた。そのあり方のままこれから先もやって行こうとしているが、そこには無理がおきている。マイナスとなるところがおきていて、ゆがみやひずみがたまってきている。

 総裁選では、候補者たちにアメリカとの関係をどうするのかの意識がいちじるしく欠けている。根本からアメリカとの関係を見直すことを試みるようなことがうったえられていない。そこに少なからぬまずさがある。これまでと同じようにただたんにアメリカにくっついて行きさえすればよいのだとなっていて、アメリカとの距離が近ければ近いほど価値があるのだとしている。

 アメリカとの距離をとらないこれまでの関係を引きずりつづけていて、そこから脱却しようとしていない。それがいまの自民党のあり方だろう。アメリカとのあいだに距離をとって行こうといった発想が自民党から出てきていないのは、発想が貧しいからである。頭が固くて発想の柔軟性に欠けている。

 発想をできるだけ柔らかく豊かにするようにして、当たり前とされていることを疑って行き、見直すべきところは見直すことを試みて行く。日本の政治ではそれをすることを避けては通れなくなっているのがありそうだ。いろいろなものごとにおいて自明性の厚いからにいくつものひびが入っている。いくつものひびが入っていることを隠し切れなくなってきている。

 参照文献 『絶対に知っておくべき日本と日本人の一〇大問題』星浩(ほしひろし) 『情報生産者になる』上野千鶴子 『現代政治理論』川崎修、杉田敦編 『国体論 菊と星条旗白井聡(さとし) 『楽々政治学のススメ 小難しいばかりが政治学じゃない!』西川伸一