どのようなことをすれば、日本の国を守れるのか―非軍事のやり方

 国の防衛を、こう派(硬派)となん派(軟派)の点から見てみるとどう見なせるだろうか。

 日本の国を侵略などから守るさいに、こう派のことだけがとり上げられがちだ。こう派で、軍事の力を高めて行く。防衛費を増やして行く。そうされがちだ。

 物理の力(hard power)と文化の力(soft power)があるが、文化の力はなん派だ。

 日本の国を守り、防衛して行くには、物理の力によるようにするのではない。こう派によるようにするのではない。こう派ではなくて、なん派のほうがより有効だ。

 こう派によるのだと、国どうしがこう派どうしになって、ぶつかり合う。自国と他国がおたがいにこう派どうしになってしまうから、戦争を防ぐことにつながりづらい。

 自国がなん派になると、そこに他国がつけこんでくることがおきかねないが、そうなると、自国と他国がおたがいにこう派になりあい、ぶつかり合いになるのを避けづらい。

 なん派になるのでは、気が抜けているのがある。気が抜けてふぬけのようになっていれば敵とは戦えない。寝ころんでいるのもある。寝ころんでいれば敵と戦うことはできづらい。

 気が抜けていて、ふぬけになっていて、やわやわやゆるゆるになっていれば、戦意がもてないから戦いがおきづらい。

 敵と戦うには、気を入れないとならず、こう派にならないとならない。こう派だと、物化や石化がおきて、かちかちの固いあり方になり、人が物としてあつかわれることになる。人どうしではなくて物どうしの関係になる。生きた有機ではなくて死んだ無機のあり方になる。物は死んだ無機のものである。死の世界だ。

 なん派のあり方の利点は、おたがいにぶつかり合いを避けやすい点だ。なん派なやり方では二つのものがあり、それによってお互いにぶつかり合いになるのを避けやすくなる。やり方としては、遊びと客むかえ(hospitality)がある。客むかえは、二〇二一年の夏の東京五輪で言われたおもてなしだ。よき歓待である。

 遊びにしたり、客むかえをしたりすれば、なん派になるから、自国と他国がおたがいにぶつかり合って戦争になるのを防げる見こみがある。なん派なやり方をどんどんやるようにすれば、日本の国を守ることになり、防衛することにつながって行く。

 遊びでは、ものごとを見るさいの視点を一つだけではなくていくつももつようにする。一つだけではなくて、ちがういろいろな視点からものごとを見て行く。

 自分をできるだけ相対化して、批判するようにして、自制心をもって抑制をかけて行く。こうしたことが遊びではいる。これらのことが日本の国はできていない。自国を絶対化して、批判(自国にたいする批判)が行なわれていなくて、抑制と均衡(checks and balances)がかかっていないのがいまの日本だ。

 客むかえで、おもてなしをして行けば、なん派になり、戦争を防ぎやすい。日本と(日本の隣国である)韓国のことをとり上げてみると、日本がもっている遠近法(perspective)としては、日本にとってアメリカは近いが、韓国は遠い。物理の距離ではなくて、仲のよさのようなものとしては、遠いところにあるのが韓国だ。日本と対立しているからだ。

 アメリカは近いから、アメリカにたいしては客むかえをしてもあまり大きな意味がない。近いものではなくて、遠いものを客むかえをすることで、大きな意味がおきる。日本でいえば、アメリカではなくて、韓国を客むかえすれば、大きな意味あいがおきる。

 自国にとって近いものと遠いものがあって、その遠近法をずっと保ちつづけてしまいがちだ。それだとこう派なあり方になってしまう。なん派にするには、遠近法を逆転させることがいる。遠近法を逆転させて、遠いものこそ客むかえをして行く。それをやるのはむずかしさがあるけど、それができれば日本を守ることになり、日本を防衛することになる。

 遊びによるようにして、客むかえをしておもてなしをして行く。それらのことをやることが、日本を守ることになる。軍事によるのや、防衛費を増やすのは、日本を守ることにはつながらず、逆に日本が戦争をすることにつながり、日本をこわすことになるおそれがある。

 日本を守るためには、こう派なことをやるべきではなくて、なん派なものである、遊びや客むかえ(おもてなし)こそがやるべきことなのだと見なしたい。こう派は言われすぎているけど、なん派なところに目が向けられていなくて、おろそかになっている。なん派なところ(つまり遊びや客むかえ)に、本質や核心があるのだとしたい。

 参照文献 「排除と差別 正義の倫理に向けて」(「部落解放」No.四三五 一九九八年三月)今村仁司 『目のつけどころ(が悪ければ、論理力も地頭力も、何の役にも立ちません。)』山田真哉(しんや) 『知の古典は誘惑する』小島毅(つよし)編著 『ユーモア革命』阿刀田高(あとうだたかし)