政治において、かかることになる費用―かかる費用が多くなっている

 日本の政治を費用の点から見てみるとどう見られるだろうか。

 費用では、取り引き費用と機会費用(opportunity cost)と代理人の費用(agency cost)をあげられる。

 自由民主党をよしとすることの利点は何だろうか。自民党をよしとすると、取り引き費用をかけないですむ。費用の点ではそれだけがゆいいつの利点だろう。

 自民党ではないほかの政党を選ぶのだと、どのように転ぶのかが未知なところがあるから、取り引き費用が多くかかる。探索のための費用が多くかかる。

 取り引きや探索の費用をかけないですむのが自民党だが、ほかの費用がうんとかかることになっている。自民党をよしとすると、機会費用代理人の費用がたくさんかかってしまう。

 かつてであれば、利益分配政治ができていたので、自民党をよしとするのは、いろいろな費用をかけないことになった。自民党をよしとすれば、取り引きや探索の費用がかからないし、機会費用もあまりかからないし、代理人の費用もそこまでかからなかった。

 かつてとはちがって、いまは利益分配政治ができなくなっていて、不利益分配の政治が避けられなくなっている。自民党をよしとしても、かつてのように、いろいろな費用をかけないですむことにならなくなっている。いろいろな費用がうんとかかるようになっている。

 自民党をよしとすると、機会費用がかかりすぎたり、代理人の費用がかかりすぎたりすることがおきてしまう。それが欠点だろう。ほかの政党をよしとすることの欠点は、取り引きや探索の費用が新しくかかってしまうことだ。どう転ぶのかがわからないので、未知のところがある。

 自民党が与党になれば、ほかの政党は与党にはなれないから、もしもほかの政党が与党であればこんなことができたとかあんなことができたとかといったことができなくなる。自民党が与党になることで、いろいろな芽をつぶしてしまうことになり、機会費用がうんとかかることになってしまう。

 一強になっているのがいまの自民党なので、代理人の費用がうんとかかることになっている。自民党の政権への監視がきちんとかかっていなくて、甘くなっている。権力をきちんと監視できていれば、代理人の費用をかけないですむ。監視ができていないと、権力が悪いことをやりたい放題になるので、国民が高い代理人の費用を支払わされることになる。

 自民党をよしとすると、かつてとはちがって、いろいろな費用がうんとかかることになるが、それと同じことがアメリカにも言える。アメリカをよしとすると、いろいろな費用がうんとかかることになる。

 かつてはアメリカをよしとしていれば、日本はいろいろな費用をかけないですんだ。いまはそうではなくなっている。アメリカの一極ではなくて、世界が多極化していっている。中国の台頭がいちじるしい。いまだに超大国ではあるものの、アメリカはかつてよりは国の力が落ちていっている。

 アメリカはかつては日本をよしとしていたが、いまでは必ずしもそうではないだろう。アメリカは日本のことをそうとうに下に見下していそうだ。なさけない国として日本のことを見ている。

 かつては日本は経済ではアメリカをもしのいで世界で一番だと言われていたのがあるけど、日本の力は落ちていて、日本をすどおり(Japan passing)や日本を無視(Japan nothing)することがおきている。日本はまわりの国などから叩かれてもいる(Japan bashing)。

 戦後にアメリカは日本を利用したが、それによって日本はアメリカから甘やかされた。アメリカに依存や従属するようになったのが日本だ。アメリカに従属しながらアメリカから自立しようとするような変なことが日本では行なわれている。

 アメリカがつくった枠組み(paradigm)を日本はとらされていて、その枠組みの中でしか動けない。枠組みをいつまでも保ちつづけているのが自民党だ。かつてはそれでもよかったが、いまでは枠組みがだめになっている。枠組みから脱することがいるけど、脱せられない、または脱しようとしないのが自民党だ。アメリカとゆ着しすぎているためだ。

 取り引きや探索の費用をかけないですむのが自民党をよしとすることにはあるが、ほかの費用がうんとかかるようになっていて、わりに合わなくなっている。自民党ではないほかの政党をよしとするのだと、未知のところがあるから、どう転ぶのかがわからない。ほかの政党をよしとするのだと、取り引きや探索の費用を多くかけないとならない。

 かつてとはちがうから、たとえ自民党をよしとして、アメリカにくっついていったとしても、いろいろな費用をかけないですむのではなくなっているのがいまだろう。いろいろな費用がかからざるをえない。かつてとはちがって、いまは中国の台頭があり、日本の国の力が落ちているから、アメリカは日本に温かくなくて、冷たくなっているのがある。

 自民党をよしとするのにせよ、アメリカをよしとするのにせよ、いずれにしても(その二つは結びついているものではあるが)日本はいろいろな費用がうんとかかるようになっていて、わりに合わないことがおきている。そうかといって、ほかの政党をよしとするのにしても、未知のところがあってどう転ぶのかがわからないから、安全さや確実さをとることにはつながりづらい。

 古い枠組みを保ちつづけようとしているのが自民党であり、その枠組みから脱するべきだが、脱せられなくなっている。またはいっこうに脱しようとしていなくて、いつまでもアメリカとゆ着しつづけて依存や従属しつづけていればよいとしている。そこにむりがおきているが、そうかといって、新しい枠組みとはいったい何なのかが見えなくなっている。古い枠組みはだめになっているが、そうかといって新しい枠組みに移行できていない。

 古い枠組みから脱するためには、アメリカと距離をとって行くことがいる。古い枠組みは、アメリカが日本にたいして当てはめたものだから、そこを見直すことがいる。反省して行くことがいる。

 かつてであれば、見直しや反省はそこまでいらなかったけど、いまでは、枠組みの見直しや反省をしないと、費用がうんとかかり、わりに合わなくなっている。自民党がやろうとしている憲法の改正のようなことではなくて、自民党が特権化されて一強になっていることや、アメリカとのゆ着を見直して反省することがいる。

 自民党はかつてに比べてより政治家の質が落ちて劣化している。選挙の制度である小選挙区制がわざわいしているのが小さくない。自民党の中で、不祥事がいろいろにおきていて、自浄の作用がない。日本が依存や従属しているところのアメリカは、そこまで正義とはいえないところが少なくない。自民党をよしとしたり、アメリカをよしとしたりすることに、いまではそこまで自明性はないだろう。

 参照文献 『こうして組織は腐敗する 日本一やさしいガバナンス入門書』中島隆信 『法律より怖い「会社の掟」 不祥事が続く五つの理由』稲垣重雄 『自民党 失敗の本質』石破茂他 『リーダーは半歩前を歩け 金大中(きむでじゅん)というヒント』姜尚中(かんさんじゅん) 『組織論』桑田耕太郎 田尾雅夫 『安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方』山岸俊男 『決定版 日本という国』小熊(おぐま)英二 『社会を結びなおす 教育・仕事・家族の連携へ(岩波ブックレット)』本田由紀 『「不利益分配」社会 個人と政治の新しい関係』高瀬淳一