ロシアの戦争と、橋わたし型の資本―枠組みどうしのあいだの橋わたし

 ロシアが戦争をやっている中で、国がもつ資本の点を見てみるとどういったことがわかるだろうか。

 物質ではない関係性の資本である社会関係資本(social capital)では、ロシアに欠けているのは橋わたし型(bridging)のものだ。

 ロシアでは国家主義が強いのがあるので、内部結束型(bonding)の資本はそれなりに多いものだろう。

 内部結束型だと、集団がまちがった方向に進むことに歯止めがかからない。宗教の狂信の集団は、内部の結束は高いが、集団が暴走しやすい。国でも同じことが言える。

 橋わたし型の資本を国が十分にもっていないと、敵と見なす国とのあいだに戦争がおきかねない。

 ロシアの国が持っている枠組み(framework)があり、それとはちがう枠組みをもっている国なのがウクライナだ。ウクライナを助けているアメリカなんかも、ロシアとはちがった枠組みをもつ。

 戦争をやっているロシアに経済の制裁(sanction)をかしているのが日本などの国だが、ロシアは日本などの国を友好な国ではない非友好の国だとしている。非友好の国だとされているのは、ロシアとはちがった枠組みをもっていることをしめす。

 ロシアとはちがった枠組みをもっている国とのあいだに、いかに橋わたしをすることができるのかがロシアのもつ外交の力だろう。

 ロシアが外交の力をもつためには、社会関係資本の橋わたし型のものを蓄積して行くべきだった。橋わたし型の資本を国がどんどん蓄積していって、資本の貯蔵量(stock)を増やして行くべきだった。

 関係性の資本をロシアはあまり持っていなかったために、ウクライナと戦争をやることになってしまった。関係性の資本の貯蔵量がほとんどなくて、せいぜいがロシアとおなじ枠組みをもつ中国なんかとの関わり合いがあるくらいにすぎない。

 国の内で結束するようなあり方が高まっても、外と橋わたしができるのではないから、国がまちがった方向に向かって暴走して行きやすい。国が戦争に向かってつき進んで行かないようにするためには、内部で結束するのを高めるのではなくて、外と橋わたしをして行く。橋わたしの資本の貯蔵量を増やすために、正の流動量(flow)を増やして行くように努力して行く。

 関係性の資本の正の流動量を増やして行くようにするのは、国が外交の努力をして行くことだ。ロシアはその努力をおこたったために、国の怠慢がわざわいして戦争をすることになった。関係性の資本が枯渇していたことがわざわいした。

 ロシアにかぎらずどの国も、橋わたしの資本が十分にあるとはいえず、貯蔵量が足りない。資本を増やして行くために、正の流動量を増やして行くことができていなくて、外交の努力が行なわれていない。

 軍事の力がそれなりに高い大国なのがロシアだけど、関係性の資本は枯渇している。ロシアは力を入れるべきところをまちがえていた。軍事の力を高めることに力を入れて行くのではなくて、関係性の資本を豊かにして行き、外交の努力をして行くべきだった。ロシアとはちがう枠組みをもつ国とのあいだに橋わたしをして行くべきだった。

 ロシアとおなじように、日本なんかでも、軍事の力を高めようとしているが、関係性の資本が枯渇しているのが見落とされている。日本とはちがう枠組みをもつ国とのあいだに橋わたしをすることがいるが、ロシアと同じように日本もまたそれができていない。

 ロシアと同じように、関係性の資本が枯渇しているのが日本であり、国の内部の結束を高めることにかまけている。橋わたしをすることに力を入れようとしていなくて、資本の枯渇を放ったらかしにしているのがロシアと日本の共通点だ。軍事の力を高めるのではなくて、資本の枯渇を改めて行き、正の流動量を増やして行くことである外交の努力をすることがいる。

 参照文献 『ブリッジマンの技術』鎌田浩毅(ひろき) 『十三歳からの日本外交 それって、関係あるの!?』孫崎享(まごさきうける) 『環境 思考のフロンティア』諸富徹(もろとみとおる)