ロシアは悪くて、アメリカは良いのか―ロシアや中国だけが悪いのか

 ロシアとウクライナが対立している。緊張が高まっている。その中で、大国であるロシアやアメリカや中国をどのように見られるだろうか。

 ロシアはアメリカに似ている。中国はアメリカに似ている。そう見なしてみたい。大国どうしでお互いに似通っている。

 なぜロシアはウクライナに攻め入ろうとしているのだろうか。それはロシアが悪いだけではなくて、アメリカが悪い。アメリカが悪いのは、アメリカは国際法の決まりをきちんと守ってきていないからだ。

 国際連合国連憲章では、武力不行使の原則が言われている。アメリカはこの武力不行使の原則を守ってきていない。

 アメリカの国内では新保守主義(neoconservatism)が力を持つようになっていて、軍産複合体が重みをもっている。軍事の力にものを言わせるあり方がとられている。力の宗教だ。

 力の宗教のあり方によるのがアメリカだが、このあり方が大国であるロシアや中国でもとられているものだろう。ロシアや中国が悪いと言えるのだとしても、アメリカもまた悪いと言える。

 法の決まりの形式の手つづきのところをしっかりと重んじて行く。アメリカが形式のところを重んじるようにしていれば、力にものを言わせるようなあり方を抑えられる。形式のところに力を入れれば、力を第一にするあり方を避けられるが、それをやって来なかったのがアメリカだろう。形式を軽んじてきた。

 ロシアや中国が悪いことをやったり、悪いことをやろうとしたりしているのだとしても、そのことをアメリカが批判をしたところで、その説得力はあまり高くはない。アメリカが言うことにはあまり説得力がおきない。ロシアや中国が、アメリカが言うことについて、うんそうだなとか、その通りだなといったように深く納得することがおきづらい。アメリカもまた少なからず悪いからだ。

 たとえロシアや中国が悪いのだとしても、アメリカもまた同じだろう(tu quoque、you too)といったことになる。おまえ(アメリカ)もそうだろうと言われてしまう。そう言われてしまうのは、アメリカが形式のところを軽んじてきているからだ。力の宗教でやって来ているのは否定することができづらい。自分たちがやっているだけに、ほかの国もまた同じように力の宗教でやることを止めづらい。

 いっけんするとたとえじかには関係がないようであったとしても、何がいることなのかといえば、アメリカのこれまでのあり方が反省されることがいる。力の宗教でやって来ていることが反省されることがいる。軍産複合体が重んじられるあり方が改められるべきだ。きちんと国連憲章の決まりを守るようにして、それによって国際的な秩序を形づくって行く。軍事の物理の力(hard power)よりも、法の決まりなどの文化の力(soft power)によってやって行くようにしたい。

 参照文献 『「集団的自衛権」批判』松竹伸幸 『ヘンでいい。 「心の病」の患者学』斎藤学(さとる) 栗原誠子 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『レトリックと詭弁 禁断の議論術講座』香西秀信