ファーストの会が立ち上げられた

 国の政治の政党としてファーストの会がつくられた。東京都の都民ファーストの会が新しく立ち上げた政党だという。

 ファーストの会とはいっても、いったい何のファーストなのか。何についてがファーストなのか。ツイッターのツイートではそうしたことが言われていた。

 都民ファーストの会であれば、都民がファーストだといった意味だからまだしも理解できるが、ただたんにファーストといっただけでは理解できづらい。

 新しくつくられた国の政治の政党であるファーストの会についてをどのように見ることができるだろうか。

 党の名前の点についてを見てみられるとすると、カタカナの外来語でファーストとしているから、修辞(rhetoric)におちいっている。たとえ漢字で自由や民主などとしたとしても、自由や民主は抽象のものだから具体としてはとらえづらい。カタカナの外来語を使うと、漢字を使うよりもなおさら意味がわかりづらい。党の名前に漢字を用いるのだとしてもごまかしやお飾りのようなところがあるから、カタカナの外来語を用いるとなおさらごまかしのところが強まる。

 政党の名前は、一般としていえば奇をてらわないで無難で落ちついた名前にしたほうがよいものだろう。だれもがけちをつけづらいような価値である自由や民主といった語を用いると危なげがないとされる。じっさいに日本の政党では自由民主党民主党などといった無難な名前の政党が広く支持を集めてきた。

 ファーストの会のファーストとは何なのかがある。ファーストが first なのであれば、はじめといったような意味だろう。反対に当たるのは last であり、さいごといった意味である。それにくわえて、ファーストフードの fast もあり、これは速いとの意味のようである。反対に当たるのは slow であり、遅いことである。fast にはしっかりと固定するといった核の意味があり、断食することであるファースティング(fasting)はしっかりと食事をひかえる、とするところから来ているものだという。

 東京都の都民ファーストの会にファーストの語が使われていることから、そこで使われているファーストをとり出して、ファーストの会と名づけただけなのかもしれない。都民ファーストの会がもととしてあって、そこから派生するものとしてファーストの会があるのだといったことである。

 何がファーストなのかや、何についてファーストなのかがわからないのがあり、それにくわえてファーストとはいったい何なのかもまたよくわからない。修辞学でいわれる多義またはあいまいさの虚偽におちいっていると言えるだろう。日本の国内ではなくて、海外に向けて情報を発信するさいに、どういったようにファーストの会を外国語に翻訳するのだろうか。もともとがファーストの会はカタカナの外来語を使っているから日本語とは言えないところがあり、それを外国語に翻訳すると、意味が不明な政党に映りそうだ。

 参照文献 『論理病をなおす! 処方箋としての詭弁』香西秀信