文学のカーニヴァル理論から考えるイスラエルの戦争(内戦)

 国がだらくする。堕落や退廃(decadance)の点から、パレスチナを攻撃しているイスラエルを見て行く。

 だらくがおきているのがイスラエルだとすると、どういったふうにそれを見て行けるだろうか。

 正義のために戦う。正戦論だ。戦争観で、正戦論になっているのがイスラエルだろう。正義のためにパレスチナに暴力をふるう。

 冬の王をやっつける。冬の王は、イスラエルにとっての敵だ。冬の王をたおして、春(夏)を呼びこむ。敵さえやっつけられれば春がやってくる。文学の理論のカーニヴァル理論だ。

 平和な中にあっては、はっきりした目標を持ちづらい。何をすればよいのかが定かではない。これといった答えを見出しづらいのである。たった一つだけの答えがあるのではなくて、いくつもの答えの候補がある。

 答えを一つだけにしぼれるのが戦争の時だ。正しい答えが一つだけある。冬の王をやっつけさえすればよい。敵をたおしさえすればよい。やるべきことをはっきりとさせやすいのが戦争のさいである。

 だらくが起きやすいのが国にはある。イスラエルに限ったことではなさそうだ。どの国にもだらくが起きやすい。少しでも気を許すと国は堕落してしまう。国家主義(nationalism)におちいる。

 正しいことのために戦う。国が正しいことのために戦うことになると、平和を投げ捨ててしまう。イスラエルは平和を投げすてて、正しいことのためにパレスチナに攻撃をしかけている。国が正戦論をとってしまっているのである。

 平和主義がある。日本の憲法の三つの大きな主義のうちの一つだ。平和主義によるのであれば、正戦論をとらないことがいる。正しいことのために戦うのではない。正しいことのために戦うのだと、平和を投げすてることになってしまう。

 あるていど汚いところがあって純粋ではないのだとしても、戦うよりも平和をとって行く。たとえじゅんすいに正しいのではないのだとしても、戦争よりも平和のほうがまだましなのだとするのである。

 じゅんすいさをとる。イスラエルはそうしてしまっている。どこの国も純粋さによることはできず、不純や汚さを抱えざるをえないから、負のことへのあきらめがいる。負があることをあきらめないと、平和によることができない。負があることを引き受けないで、正をとろうとしてしまうと、正義のために国が戦うことになってしまう。

 方法がはっきりとするのが戦争のさいだ。平和なときは、方法をはっきりとさせづらい。ある人によいことであっても、別な人には悪い。すべての人にとってよい方法はありえづらい。

 平和によるためには、一つの確かな方法によるのではなくて、非方法によるようにして行く。方法によるのだと、冬の王を倒しさえすればよいのだとなる。敵をたおしさえすればよい。春(夏)をもたらす方法がはっきりとしていることになる。それだと戦争をみちびく。国のだらくを引きおこす。

 パレスチナイスラム主義の集団にも同じことがいえて、方法によってイスラエルに攻撃をしてしまっている。パレスチナイスラム主義の集団は、イスラエルにたいして犯罪を行なってきている。

 方法と方法とが争い合う。ぶつかり合う。戦争だとそうなってしまう。イスラエルパレスチナに暴力をふるっているのを片づけるには、方法によるのではない非方法のあり方が一つにはいりそうだ。方法によるのだと、戦争をしつづける。

 お互いがお互いの冬の王をたおそうとする。お互いにとっての敵を倒そうとする。お互いにとっての冬の王をたおして、お互いにとってのそれぞれで別々の春(夏)を呼びこんで行く。お互いにだらくがおきてしまっている。とりわけ国のだらくは深刻だ。

 一つの答えの幻想が戦争にはあって、その幻想にはまりこむ。どの国にもそれがある。これがゆいいつの答えなのだとできるのが戦争にはあるけど、それは幻想にすぎない。

 じっさいの現実は、答えがいくつもあったり、またはめぼしい答えがなかったりすることが多い。たしかな答えを見つけづらい。現実はなかなかむずかしいけど、それをたんじゅん化できるのが戦争であり、どの国もたんじゅん化への傾向を強くもつ。戦争への傾向だ。

 戦争への傾向が強いのを、平和のあり方に転じて行く。なるべくものごとを単純化しすぎないようにして行く。たんじゅんな二分法ではものごとは割り切りづらいから、割り切れないことの不快さに耐えるようにして行くことがいる。

 割り切れない不快さをできるかぎり思考して行くようにしたい。不快さに耐えられなくなると、(国であれば)国が戦争をしてしまう。不快さに耐える力がとぼしいと、国民が戦争をかんげいしてしまう。集団における危険さへの移行(risky shift)の心理がおきる。

 参照文献 『戦争の克服』阿部浩己(こうき) 鵜飼哲(うかいさとし) 森巣博(もりすひろし) 『思考のレッスン』丸谷才一(まるやさいいち) 『本当にわかる論理学』三浦俊彦法哲学入門』長尾龍一超訳 日本国憲法池上彰(いけがみあきら) 『創造力をみがくヒント』伊藤進 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『ナショナリズム 思考のフロンティア』姜尚中(かんさんじゅん) 『本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき四三七の事柄』クリス・ヘッジズ 伏見威蕃(いわん)訳 『増補 靖国史観 日本思想を読みなおす』小島毅(つよし) 『境界線の政治学杉田敦(あつし) 『ポケット図解 構造主義がよ~くわかる本 人間と社会を縛る構造を解き明かす』高田明典(あきのり) 『目のつけどころ(が悪ければ、論理力も地頭力も、何の役にも立ちません。)』山田真哉(しんや) 『精神分析 思考のフロンティア』十川幸司(とがわこうじ) 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『超入門! 現代文学理論講座』亀井秀雄 蓼沼(たでぬま)正美