日本の地から考えるイスラエルやロシアへの批判

 なぜ、日本の地において、イスラエルを批判する声をあげるのだろうか。

 なぜ、日本の地にいて、パレスチナの人たちを救うための声を投げかけるのだろうか。

 じっさいに争い合いがおきている地であるのがイスラエルパレスチナや(ロシアとウクライナの戦争であれば)ウクライナだ。そこから離れたところである日本の地にいながら、イスラエルやロシアへの批判を行なう。それはいったいなぜなのだろうか。

 もしもイスラエルやロシアへの批判を行なうのであれば、そこから離れた地である日本にいながら声をあげるのはおかしい。じっさいに争い合いがおきている地であるイスラエルやロシア(パレスチナウクライナ)へ行け。それらの地へ行ってそこで批判の声をあげるべきだ。X(Twitter)のつぶやきではそう言われているのがある。

 日本にいながら、日本から離れたところでおきている争い合いへの批判の声をあげて行く。日本の地にいて、そこから離れたところでおきている悪いことへ批判を投げかけるのは、近代ならではのところが一つにはありそうだ。時代性だ。

 いまは後期の近代だ。空間や時間が圧縮されることになるのが近代である。空間や時間がちぢむ。日本とは離れているのがイスラエルパレスチナやロシアやウクライナだけど、近代においては空間や時間がちぢむのがあるから、遠いようでいて近い。あんがいそう遠くはない。

 後期の近代であり二十一世紀なのがいまである。いまは情報の技術が進んでいる。交通の便がすごく良くなっている。交通の行き来がさかんだ。世界主義(globalization)のありようになっている。国どうしのあいだの境界の線をこえやすい。

 人や物やお金や情報などが、境界の線をこえて行く。お金なんかでは、日本の外への税金のばらまきなんていう批判があるけど、これは色々なものが(良くも悪くも)境界の線をこえて行きやすくなっていることが関係していそうだ。

 お金は天下(世界)のまわり持ちである。浮きものであり、世界のきぼで人から人へとお金がわたって行く。とどまらずに、どんどん人から人へ、または国から国へと交通して行く。ぎゃくに、片(かた)行きであり、世界の(または日本の内の)どこかにお金がかたよってあるのもいなめない。階層(class)の格差の固定化が深刻になっている。

 繁栄している地は、お金が外からたくさん入って来ているとの説がある。外資がたくさんその地に入ってくる。外からお金をその地にたくさん呼びこめる。具体としては国ではシンガポールなんかがある。

 日本にとっては日本人は自分たちだ。外国の人たちは他者だ。外部に当たるのが他者である。自分たちである日本人が幸せであるためには、他者である外国の人たちが幸せかどうかが関わる。他者が幸せかどうかが、日本人に関わってくる。

 他者である外国の人たちがものすごい不幸におちいっている中で、日本人だけが幸せでいられるのだろうか。それは難しいだろう。ことわざでは知らぬが仏(Ignorance is bliss.)と言われるのがあるけど、近代の今のありようはそれが成り立ちづらいところがある。色々な情報を得られるからである。

 他者である外国のことについて、関心を持ちづらい。国際の報道が弱いのが日本だ。国際の報道に強くはないから、国の外にいる他者への関心を強めづらいのがあるけど、他者が疎遠(そえん)な外部にならないようにして行く。他者が疎遠な外部に置かれないようにして行く。

 日本の国の内や外に、色々な他者がいる。それらの他者が疎遠な外部に置かれないようにして、関心を持つようにして行きたい。国の中のことと共に、日本で国際の報道がもっとさかんになればさいわいだ。外部の他者が不幸なのであれば、日本人が幸せになりづらいのがあり、外部の他者と共に日本人もまた幸せになるようにして行く。

 幸福を追求する権利を持つ。個人がその権利を持つ。日本ではその権利があるけど、これはいまの日本の憲法によるものだ。日本人が幸福を追求するさいには、他者である外国の人たちを排除することはできそうにない。

 他者を排除しないで包摂して行く。他者を排除してしまうと、日本人の幸せがなりたちづらい。近代のありようや世界主義のありようをくみ入れるとそうとらえることが成り立つ。日本を含めて、国の中にいくつも穴が空いていて、国は多孔(たこう)化している。外部の他者をくみ入れることがいるようになっている。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『超訳 日本国憲法池上彰(いけがみあきら) 『アイデンティティ(identity) / 他者性(otherness) 思考のフロンティア』細見和之(ほそみかずゆき) 『境界線の政治学杉田敦(あつし) 『グローバリゼーションとは何か 液状化する世界を読み解く』伊豫谷登士翁(いよたにとしお) 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『考える技術』大前研一 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき) 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『十三歳からの日本外交 それって、関係あるの!?』孫崎享(まごさきうける)