政治のお金の管理のあり方と、状況の要因

 政治家は(あまり)つかまらない。その代わりに、秘書や会計の責任者がつかまった。政治のうら金では、政治家ではなくて、下の者がつかまった。

 うら金のことでは、あたかも政治家の身代わりであるかのように、秘書や会計の責任者がつかまったが、それでよいのだろうか。

 因果の関係から見てみると、個人の要因と、状況の要因の二つで見てみられる。

 お金を管理して行く。そのさいに、性悪説で見ることがいる。性悪説を前提の条件にしなければならない。お金に関することで、もしも悪いことができるありようになっているのだとしたら、悪いことをしてしまう。それが人間のさがである。

 悪いことができるありようになっているのにもかかわらず、悪いことをしない。お金に関することでは、人の良心を当てにしてはならない。良心を当てにしたら、裏切られることになる。人の心は当てにならないのである。

 うら金のことで、かりに秘書や会計の責任者が悪いことをしていたのだとしても、秘書や会計の責任者が悪いとは必ずしも言い切れないかもしれない。当人が悪いのだとするのは個人の要因だ。

 個人の要因でとらえるのはありがちなものだ。ほかの視点を持ち出せるのがあって、状況の要因でとらえることがなりたつ。はじめから悪いことができないような仕組みになっていれば、悪いことをやりようがない。そのほうが親切な仕組みである。たとえ悪いことをやりたくてもできない仕組みになっていたほうがのぞましい。

 やろうと思えば悪いことができてしまう。悪いことができてしまう仕組みになっていたのだとすれば、それは仕組みが悪い。当人が悪いとは言い切れそうにない。状況の要因でとらえてみるとそうとらえることがなりたつ。

 お金に関することでは、人は信頼できない。人を信頼してはならない。人にたいして不信や猜疑(さいぎ)を持たなければならないのがある。人を信頼した上でなりたつ仕組みではよくないのがあり、裏切られる見こみが高い。

 悪いことをやる動機づけ(motivation)からすると、秘書や会計の責任者よりも、政治家のほうがそれが強い。比べてみると、秘書や会計の責任者が悪いことをすることがあるのであれば、政治家はなおさらそれをする見こみが高い。なぜかといえば、政治家のほうがより野心や欲望が強いからである。権力への意思がより大きい。力への意思がより強いのが政治家だ。

 仕組みが悪い中においては、悪いことをやってくださいと言わんばかりのありようになっている。悪いことをしてはならないとか、悪いことをするなとなっているのではなくて、どうぞ悪さをしてくださいといったふうになっている。お金に関することでは、人を信頼した上でなりたつ仕組みになっているのだと、さあ悪さをしてくださいと言っているのと同じことになる。悪さをするのをうながしているのに等しい。そう言っても必ずしも言いすぎではないかもしれない。

 視点を増やしてみて、個人の要因だけではなくて、状況の要因をくみ入れてみると、秘書や会計の責任者をとり巻く外の状況におかしさがある。外の状況の中には、政治家を含む。上の者である政治家がおかしかった見こみが低くないのである。

 お金に関することでは、もともと悪さができないような仕組みになっていないといけないけど、そうなっていなかったのだとすれば、集団として悪さをしようとするこんたんを持っていた見こみがある。

 体系(system)として見て行く。関係し合うことがらが集まったものなのが体系だ。体系として見てみると、その集団が悪さをしようとしていたとするのならば、体系の中のいち要素だけを見てもしようがない。木を見て森を見ずになってしまう。

 秘書や会計の責任者はたんなる集団の中の歯車や部分に当たるだけだとすると、集団の上の者に責任があることになりそうだ。視点を増やしてみるとそうとらえられるところがある。

 信じないようにして、うたがう。お金の管理のことでは、秘書や会計の責任者を信じない。うたがう。お金の管理のことを含めて、政治家についてはうんとうたがう。政治家が言っていることをそのまま丸ごとうのみにはしないようにする。

 何をいちばんうたがうようにするべきなのかといえば、下の者である秘書や会計の責任者なのだとは言えそうにない。疑うべきなのは上の者である政治家の言動だ。なぜかといえば、政治家は表象(representation)だからである。国民そのもの(presentation)なのではない。心の中の像(image)を外に表現したものなのが表象である。

 参照文献 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『クリティカル進化(シンカー)論 「OL 進化論」で学ぶ思考の技法』道田泰司(みちたやすし) 宮元博章(みやもとひろあき) 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや) 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』橋下徹 『うたがいの神様』千原ジュニア 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし)