眠りから覚醒(かくせい)へ - 安倍政権と岸田政権の対比

 さいきん、日本の報道が、ちょっと良い。政権を批判することが少しなされるようになってきている。

 報道が政権の批判を行なう。日本の報道で政権の批判がなされ出しているのを、どのようにとらえられるだろうか。

 眠りこむ。そうだったのが、これまでの日本の報道だ。それがもっとも深かったのが、安倍晋三元首相の政権のときである。第二次の安倍元首相の政権のときだ。

 いちばん眠りが深かった。深く眠りこませる。ふかくまひさせる。陶酔(とうすい)が強かったのが、安倍元首相の政権のときだ。

 いまは岸田文雄首相の政権だけど、陶酔がやや浅くなってきている。覚醒(かくせい)が少しおき出しているのだ。

 テレビ番組を見てみると、日本のテレビは陶酔させるはたらきがうんと強い。覚醒させる働きがはなはだしく弱い。

 保守性が強いのがテレビだ。革新のところが弱い。右傾化しているのがあり、左派のところがかつてよりも弱まっている。

 与党である自由民主党の岸田首相の政権では、テレビで少し覚醒の動きがおきているのである。覚醒のことを言うテレビ番組の出演者が、ちらほら出てきている。覚醒の人材がテレビに出ることが少しおき出している。

 テレビは保守のところが強い。保守性は、日常でありケに当たる。革新は非日常でありハレだ。日本のテレビは娯楽性が強い点ではハレだけど、保守性が強い点ではケのところが大きい。

 陶酔の人材はケである。日本のテレビは陶酔の人材がいっぱい出ている。陶酔の人材が多い。ケの日常の秩序を保ちつづけて行く。秩序の温存だ。陶酔の人材はいっぱいいるいっぽうで覚醒の人材がとても少ない。

 覚醒のハレの人材は、魔女だ。このさいの魔女は、性でいう女性をさすものでは必ずしもない。ただ、日本の国は男性中心主義が強くて、女性が排除されているのがあるのは否定できない。日本は父権主義(paternalism)によっている。

 魔女は日ごろは排除されている。ケの日常においては排除されていて、辺境や周縁(しゅうえん)に追いやられている。辺境者や周縁者なのが魔女である。

 とくべつな非日常のお祭りのようなときに魔女は中心におどり出て活躍し出す。そうじの役を果たす。日ごろにためこまれた汚れを外に吐き出す。

 これまでの日本の報道は、うそ発見器として働いてこなかった。ほとんどその働きをしてこなかった。それがいまの岸田首相の政権になって、少し報道がうそ発見器としてはたらき出しているのである。

 これからの日本の報道はどういうふうでなければならないのか。どういうふうでないとならないのかと言えば、うそ発見器として働くようでなければならない。そうでないと、日本が信頼の社会になることはのぞめない。

 政治家は、表象(representation)だ。国民そのもの(presentation)ではなくて、その代わりにすぎないのが政治家である。表象なのが政治家だから、うそをつくことが少なくない。

 心の中の像(image)を外に表現したものなのが表象だ。

 うそをつくことがしばしばあるのが政治家なのだから、報道がうそ発見器として働くようでなければならない。そうでないと信頼の社会になることはできない。日本で政治への不信が強いのは、日本が信頼の社会に移ることができていないからだ。

 政治家がうそをつく。うそをついた政治家は、損をこうむる。そうであったら良いけど、日本ではその逆に政治家は得をする。益を受ける。うそをついても、針千本を飲ませられることがないからだ。報道がうそ発見器として働いていないことがわざわいしているのである。

 いまの岸田首相の政権では、少しだけではあるけど、うそをついた政治家が針千本を飲ませられるようになり出している。まだまだ、針が一本とかまたは一〇本くらいしか飲ませられていない。一〇〇〇本にはほど遠いけど、安倍元首相のときなんかはひどかったのがあって、針が〇本だった。〇本に近かった。

 陶酔から覚醒へ。その動きがどんどん強まって行けば良い。その動きにそうものなのが、与党である自民党の政治にさよならや終わりを言いわたすことだろう。どこの政党が与党になるのだとしても、自民党がこれまでにやってきたように、人々を陶酔させてまひさせるのではなくて、覚醒させるようであるのがのぞましい。

 ちゃんと政治の権力と距離がとれるようであったほうが良い。距離がゼロだと危ないから、あるていどより以上の距離をとることがいる。距離がゼロだと人々がまひしてしまい、独裁主義におちいる。

 参照文献 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『楽々政治学のススメ 小難しいばかりが政治学じゃない!』西川伸一 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『うその倫理学』亀山純生(すみお) 『日本語の二十一世紀のために』丸谷才一 山崎正和世襲議員 構造と問題点』稲井田茂(いないだしげる) 『政治家を疑え』高瀬淳一 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『こうして組織は腐敗する 日本一やさしいガバナンス入門書』中島隆信 『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』金田信一郎 『右傾化する日本政治』中野晃一(こういち)