万博(ばんぱく)の、経済の効果―効果の大きさと、かかる費用の大小

 経済の効果がなん兆円にもなる。だから万博はやったほうが良い。やらない手はない。関西と大阪の日本国際博覧会について、そう言われているのがある。

 経済の効果がなん兆円にもなるから、万博は日本のためになるのだろうか。すべての日本人(日本の関係者)にとって益になるものなのだろうか。

 効果だけではなくて、費用の点を見のがすことはできづらい。はじめの見積もりから、どんどん費用がふくれ上がっていっているのだ。万博にかかる費用がどんどん増えて行っている。

 費用対効果や、利益(return)と危険性(risk)がある。万博をそれらの点から見てみることがなりたつ。

 かんじんな点は、費用のことを抜きにして、効果がどれだけ見こめるのかを言うことにあるのではない。効果のところだけをとり上げるのではなくて、費用をきちんととり上げるようにしてみたい。

 どういったことがきもなのかと言えば、費用対効果がどんどん悪くなって行っているのが万博なのである。それがどんどん悪くなって行っている中で、費用を抜きにして効果のところだけをとり上げたとしても、つり合いが取れた見かたができることにはなりそうにない。

 はじめは条件が良かったのが、どんどん悪くなって行く。条件が悪くなっているのだから、効果が見こめなくなって行っているのに等しい。効果がうすくなって行っているのである。

 条件がきびしくなって行っているのであれば、それじたいへの見なし方にもきびしさがいる。よりきびしい見かたが投げかけられなければならない。より税金をかけて行くのであれば、負担がより高まることになるのだから、ほんとうに税金をさらにかけて行くべきなのかどうかを、これまでより以上にきびしく見て行くことが必要だ。甘く見なしてしまうのはふさわしいことではないだろう。

 すごい経済の効果があるのが万博なのであれば、高い利益(return)があることを示す。高い利益があって、危険性(risk)が低いものはほとんどない。高い利益が見こめるものは、危険性もまた高いことが多いのである。

 危険性は低いけど、すごい利益は高いのが万博なのであれば、そこにはうさんくささがつきまとう。うそくささがある。うたがわしい。一番ありえやすいのは、利益が低いかわりに危険性もまた低いか、利益が高いけどそのぶんだけ危険性もまた高いものだ。

 たとえ経済の効果がなん兆円にもなるのだと言われたとしても、もう一つ実感がわきづらい。万博によって一人ひとりの人たちがまんべんなくうるおうのかと言えば、もう一つ確からしさが低そうだ。税金の負担は確からしさがあるが、そのいっぽうで得られる効果には確からしさがあまりわきづらい。

 もともと費用対効果はあやふやなところがあるとされていて、そこまでしっかりしたものではないものだという。効果について、あたかもすべての人たちに益があるかのようにするのは、いわば利益の分配の政治だ。

 いまの時代は利益の分配の政治がなりたたなくなっていて、不利益の分配の政治が避けられなくなっている。いまの時代の状況をくみ入れてみると、万博では、不利益の分配の政治が行なわれることになりそうだ。

 かつての時代である、ぜんかいの大阪の万博のとき(一九七〇年)は、政治において利益の分配の政治ができていた。日本の経済の成長がのぞめたのである。(ある点でいえば)かつてはよい時代だった。

 万博にかぎらず、日ごろから与党の自由民主党や野党の日本維新の会(第二自由民主党)がやっているものなのが、不利益の分配の政治だ。負担はほかの誰かに押しつけて行く。負担は自分たちでは負わない。利益はちゃっかり自分たちのものにして行く。ごういんに利益を自分たちのものにして行くのである。

 万博の効果は、維新の会などの、あるかぎられた人たちに主に行き、それで終わってしまう。広く日本の益になることにはなりそうにない。不利益の分配の政治が行なわれるからである。ぜんかいの大阪の万博のとき(一九七〇年)みたいな利益の分配の政治はできそうにない。かつての時代とは、状況がちがう。

 るいじ性であるよりも、差異性によっている。ぜんかいの大阪の万博のころは、利益の分配の政治ができていた。万博の効果であるよりも、利益の分配の政治の効果が見こめたのである。

 差異性によっているのがあり、かつての時代とはちがい、いまの時代は不利益の分配の政治をやらざるをえない。万博の効果であるよりも、利益の分配の政治の効果が見こめない。利益の分配の政治ができなくなっているから、たとえ万博をやったのだとしても、不利益(負担)の押しつけ合いで争い合う。だまし合う。利益のとり合いで争い合う。そうしたことがなされるのがいまの時代だろう。

 参照文献 『目のつけどころ(が悪ければ、論理力も地頭力も、何の役にも立ちません。)』山田真哉(しんや) 『「不利益分配」社会 個人と政治の新しい関係』高瀬淳一 『疑う力 ビジネスに生かす「IMV 分析」』西成活裕(にしなりかつひろ) 『構築主義とは何か』上野千鶴子編 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや)