中東でおきているのが紛争だ。
いま起きているものである紛争と似たものにはどういったものがあるだろうか。
似たものとしては、政治をあげることができる。
争い合う。人どうしが争い合うことがあるけど、その中でもっとも激しく深いものになるのが、政治における対立だ。
浅くて生やさしいぶつかり合いではないのが、政治における争い合いである。一番ゆずることができづらい。妥協しづらいのである。譲歩(じょうほ)することができづらいものだ。
かんたんに譲歩できるものであれば、政治における対立にはなりづらい。政治においてはお互いにはげしくぶつかり合うことにならざるをえないのである。学者のカール・シュミット氏は、政治についてをそうとらえられるという。
起きてほしくはないものなのが紛争だ。それが起きてしまっているのが中東である。イスラエルと、パレスチナのイスラムの原理主義の集団とが、戦争をし合う。お互いの地域の人たちが殺されている。
何が足りていないのかがある。イスラエルに何が足りていないのかといえば、政治だ。とくにそれが足りなくなりがちなのがイスラエルである。
ほかの国よりもより政治が足りなくなりやすいのがイスラエルだろう。政治をなすのは、何かと対立することだ。
協調ばかりがあって、政治が足りていないのがイスラエルである。協調によりすぎていて、政治がない。対立がないのである。
アメリカは、イスラエルと協調している。アメリカはイスラエルを支持しているのである。イスラエルのやることを良しとしている。協調はあるけど、対立がない。
もっとどんどんイスラエルと政治をやり合う。イスラエルの悪いところをどんどん批判して行く。イスラエルと対立し合うようにすれば、政治をやることが成り立つ。政治がなされていないので、イスラエルが暴走したとしても、それに歯止めがかかりづらい。
イスラエルのことはいったん置いておくとして、たとえば極東(東アジア)の地域を見てみたい。日本は、アメリカとのあいだで政治をやっていない。協調はあるけど、対立し合うことがない。アメリカと政治をやり合おうとしていないのが日本である。
天皇のようなものなのが、日本においてのアメリカだ。戦後の日本において天皇に当たるのがアメリカであり、それに従属しつづけているのが日本である。天皇に動かされている。他律(heteronomy)のあり方だ。何らかの強制にしたがって行動することなのが他律だ。超越の他者(hetero)にあたるのが天皇である。
アメリカや欧州などの先進の国々があるけど、西洋の先進の国どうしは、協調はあるけど対立があまりない。多様性がなくて、画一化している。アメリカがイスラエルを支持すれば、それにほかの欧州の国もつづく。アメリカと同じようなことをする欧州の国が多い。
国どうしの関わり合いだと、協調することは多いけど、対立がなされづらい。お互いに国どうしがばしばし批判し合うようなあり方になっていないのである。たんじゅんな二分法になってしまっていて、協調するのなら協調するだけ、対立するのなら対立するだけになりがちだ。国どうしの関わり合いは、そのどちらかだけになることが少なくない。
ユダヤ人が歴史において差別されてきたのがあるから、ユダヤ人の国であるイスラエルへの批判が禁忌(taboo)になってしまっている。イスラエルに協調するだけになっていて、対立が欠けてしまう。イスラエルと政治をやることがなされていない。もしもイスラエルが悪い行動をとったとしても、日ごろから協調するだけだから、いざとなってすかさず対立することができづらいのがありそうだ。
たんじゅんな二分法のあり方から脱するようにしたい。イスラエルと協調するのはあっても良いけど、もっと対立することもどんどんやって行く。イスラエルの悪いところをどんどんさし示して批判して行く。どんどん政治をやって行くことがいる。
国どうしではないけど、イスラエルとパレスチナのあいだには、政治がある。お互いのあいだには対立があるから、政治があるのである。紛争で、戦争をやり合うのは何とかして避けなければならないが、お互いに政治をやり合い、民主の話し合いをすることができれば良いことだ。
けんぜんではなくて、不健全な関わり合いになってしまっているのが、イスラエルとアメリカ(や欧州の国々)との関わり合いだろう。協調はあるけど、対立がないから、政治がなされていない。もっと政治をどんどんやり合うようにしなければ、けんぜんな国どうしの関わり合いにはなりづらい。イスラエルとほかの国との関わり合いは、とりわけ不健全になりやすいのがありそうだ。イスラエル(ユダヤ人)への批判が、禁忌になっているふしがあるためである。
差別をするのは悪いことだけど、批判は必要である。本質をぎんみすることなのが、批判である。イスラエルをふくめて、あらゆる国は、批判にたいして閉じないようにすることがいる。国だけではなくて、地域ではパレスチナがあるけど、地域もまた批判にたいして閉じないようにしなければならない。国や地域などのあらゆるものは、批判にたいして開かれていることがいり、(表面だけを見るのではなくて)本質をぎんみして行くことがいる。
参照文献 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『現代政治理論』川崎修(おさむ)、杉田敦(あつし)編 『政治の見方』岩崎正洋 西岡晋(すすむ) 山本達也 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『差別原論 〈わたし〉のなかの権力とつきあう』好井裕明(よしいひろあき) 『国体論 菊と星条旗』白井聡(さとし) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『法哲学入門』長尾龍一