日本の国の政治と宗教―政教分離が崩れているおそれ

 いまの日本の国の政治を、戦前や戦時中のときと比べてみるとどういったことが言えるだろうか。戦前や戦時中のときとの共通点として、超国家主義になっているところがある。

 超国家主義(ultra-nationalism、extreme-nationalism)は、政治学者の丸山真男氏が言ったものだ。戦前や戦時中の日本の国のあり方を言ったものだ。

 いまの日本の国の政治で危ないのは、超国家主義になっていて、近代国家ではなくなっているふしがある点だ。近代国家とは言えなくなっているのは、中性国家の原則が崩れているのがあるためだ。

 中性国家の原則では国の政治において政教分離がとられていることがいる。この政教分離がとられなくなっているのがあり、日本の政治においてカルト宗教が国の政治の中に入りこんでいるとされているのがある。

 純粋なカルト宗教ではないような、準カルト宗教のようなものをふくめて、与党である自由民主党の中にはさまざまな宗教の集団が関わっているのだとされる。日本の国内のものだけではなくて、韓国の宗教の団体が自民党の中に入りこんでいて関わっているのだとされる。

 戦前や戦時中に見られたように、日本の国は宗教に弱いところがある。国をあげて国家神道をよしとした。天皇制において天皇を生きている神とした。神とは世界の擬人化だ。その逆は擬人化の否定となる。擬人化の否定では、神とは世界の秩序のことをさす。

 未開の民族に見られるのが擬人化の思考であるという。人々の集合である国は擬人化によるものだという。共同幻想であるのにすぎないものである国が、あたかも実体であるかのように見なされてしまう。擬人化を否定すると、国とはその地域の法の体系のことである。

 国とは何かといえば、法つまり憲法(constitution)のことであると言えるだろう。国を設立する(constitute)のが憲法だ。国があって憲法があるのではなくて、憲法によってはじめて国がつくられるのだ。

 擬人化による国が暴走することによって、国がまちがった方向に向かってつっ走っていった。それが戦前や戦時中の日本だ。日本の政治はもともと宗教に弱くて、宗教にすがってしまいやすい。

 いまの日本の国の政治は、近代国家とは言えなくなっているところがあり、国の政治に宗教が入りこんでしまっている。政治と宗教がくっついている。政教分離ができていない。戦前や戦時中のような、超国家主義にふたたび戻ろうとしている。戦前や戦時中と同じような、政治と宗教がくっついた形になってしまうのはまずい。

 日本の国のことをよしとするのではなくて、近代の中性国家の原則をよしとするようにするべきではないだろうか。近代国家とはいえず、中性国家の原則によっていないのが日本の国のありさまなのだとすれば、そうした日本の国のことをよしとするわけには行かない。

 いまいちどどういったあり方によるべきなのかの原点に立ち返るようにしたい。戦前や戦時中のような、超国家主義になっているのが日本の国であるとすると、それをよしとするわけには行かないのがある。戦前や戦時中と同じまちがいを再びくり返すことになる見こみが高い。

 戦前や戦時中と同じまちがいをくり返さないために、日本が近代国家であると言えるようにして、中性国家の原則によるようにして行く。政教分離によるようにして、政治と宗教がくっついてしまわないようにして行く。自民党の中にはいろいろな宗教の集団が入りこんでしまっているのを改めるようにして行く。国内や国外のカルト宗教をふくめた宗教の集団が国の政治に関わらないようにする。

 日本の国の全体が一つの宗教にのめりこんでいったのが戦前や戦時中だろう。国家神道によっていて、日本の国のことをよしとする宗教に日本の国の全体が悪く酔っていた。集団として狂っていた。ふたたび全体が悪く酔わないようにして狂わないようにするためにいるのが近代国家の中性国家の原則だ。

 中性国家の原則がとられていないで崩れているのがいまの日本の国の政治にはあるとすると、全体が悪く酔いやすく狂いやすくなっている。まひさせられやすくなっている。悪い酔いかたを防ぐために、近代国家の中性国家の原則によるようにして政教分離をなすようにして行きたい。

 参照文献 『民族という名の宗教 人をまとめる原理・排除する原理』なだいなだ 『ええ、政治ですが、それが何か? 自分のアタマで考える政治学入門』岡田憲治(けんじ) 『楽々政治学のススメ 小難しいばかりが政治学じゃない!』西川伸一 『日本が「神の国」だった時代 国民学校の教科書をよむ』入江曜子 『山本七平(しちへい)の思想 日本教天皇制の七〇年』東谷暁(ひがしたにさとし) 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『日本国民のための愛国の教科書』将基面貴巳(しょうぎめんたかし) 『リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史』長尾龍一憲法主義 条文には書かれていない本質』南野森(しげる) 内山奈月