どのようにウイルスの感染に対応して行くべきなのかと、近代の確実性のあり方と脱近代の不確実性のあり方

 新型コロナウイルス(COVID-19)に日本の政治はどのように対応して行くべきなのだろうか。そのさいに二つの切り口があるとして、確実性の切り口と不確実性の切り口があるとしてみたい。

 二つの切り口がある中で、日本の政治は確実性の切り口しかもっていない。不確実性の切り口をもっていないので、不確実性があるものごとに対応しづらい。ウイルスへの対応は不確実性がかなり高いところがあり、それにたいして日本の政治は確実性の切り口で対応しようとしつづけているためにうまくいっていない。

 確実性の切り口は効率性による。それによることによって効率性は高まるが適正さがないがしろになる。まちがった方向にどんどん進んでいってしまうことがおきてくる。それがおきたのが日本の戦前や戦時中だ。日本の戦前や戦時中は国の全体がまちがった方向に向かってつっ走っていった。国は不確実性の切り口をもっていなかった。ただたんに確実性の切り口によって一つの方向に効率性によってつっ走っていったのである。

 近代の時代の近代主義(modernism)は確実性の切り口による。たった一つの確かな正しい道を揺るぎのない足どりで進んで行く。足どりにためらいやとまどいやちゅうちょはない。それを批判するのが脱近代(post modernism)の不確実性の切り口だ。じっさいに近代の時代から脱することであるよりも、近代の時代がおちいりがちな確実性の切り口を近代に内在しながら批判する視点による。近代に内在しながら近代を越え出よう(trans modern)と試みる。

 まずいことがおきているさいに、そこに答えとなるものがあるのか。一つの答えがあるのが謎解き(puzzle)だ。答えが一つも無いのが矛盾(paradox)だ。答えがいくつもあるのが葛藤(dilemma)だ。出題者が心にいだくものが答えになるのがなぞなぞ(riddle)だ。

 確実性によるのは一つの答えがあるさいに有効だ。それによってはうまく行きづらいのが答えが無いものや答えがいくつもあるものだろう。答えが無いものや答えがいくつもあるものについては不確実性の切り口によってやったほうが少しはとり組みやすい。

 日本の政治では政権がまちがったことをやったことが明らかになったとしても政権はそれを認めようとしないことが多い。それは一つには確実性の切り口しか持ち合わせていないことによっている。政権はあくまでも確実に正しいことをやったとするしか手だてをもっていない。

 これがたった一つの正しいやり方だとか、政権はまちがいなく正しいことをやった(やっている)とすることができづらい相手がウイルスなのがある。近代の確実性の切り口が通じづらい相手がウイルスだ。

 確実にこれが正しいとしているのが政権だが、それは虚偽意識であるのにほかならない。これまでの日本の政治で行なわれてきたことにはいろいろなまちがいがあり、いまの政権もまたいろいろにまちがいをしでかしている。それは人間が合理性に限界を持っていることから来ている。そのことをおおい隠し、完全な合理性をもっているかのようによそおう。そうよそおう政権による虚偽意識が通じづらいことがおきている。

 政治におけるさまざまなものごとは、たった一つの答えがあることはほとんどないものだろう。ほとんどのものが答えが無いように見えたりいくつも答えがあったりするものだ。そうであるのにもかかわらず、たった一つの答えがあって、その答えを実行に移しているかのように見せかけているのが日本の政治で行なわれてきていることだろう。

 まったくまちがうことのない完全な合理性をもっているとする政権の虚偽意識がまかり通りつづけるのであれば、確実性の切り口だけでもやって行けることになる。その虚偽意識が通じづらいことが明らかになれば、確実性の切り口ではたち打ちできないことがわかることになる。不確実なものごとについてを確実性の切り口でやるとまちがう危険性が高くなり、まちがった方向につっ走っていってしまいかねない。

 効率性によってまちがった方向にどんどんつっ走っていってしまうのを防ぐ。そのためには不確実なものごと(ほとんどすべての政治のものごと)にたいしては不確実性の切り口によるようにして、いったん動き出したらもはや止まらないといった強い慣性がはたらかないようにしたい。強い慣性がはたらくことを少しでも防ぐための仕組みなのが権力の抑制と均衡(checks and balances)による自由民主主義(liberal democracy)だろう。

 参照文献 『論理パラドクス 論証力を磨く九九問』三浦俊彦 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫現代思想を読む事典』今村仁司編 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『反証主義』小河原(こがわら)誠