日本と韓国のぶつかり合いと相互作用―国内と国外の相対性と相互流通

 韓国は、日本との防衛協定である GSOMIA(ジーソミア)をうち止めることを決めたという。これによって日本と韓国とのあいだで北朝鮮についての軍事情報をやり取りすることがとり止めになることになった。

 日本と韓国とのあいだで対立がおきているが、ここで目を向けるようにするべきなのは相互作用ということではないだろうか。日本と韓国とのあいだには相互作用がはたらいている。そうであるにも関わらず、日本の立ち場からは韓国が悪いと言い、日本の大手の報道機関は(結果として)おおむねそれをあと押ししている。韓国の立ち場としては、日本が悪いとしているのだ。

 日本と韓国は、それぞれが実体であるというよりは、関係によって成り立っているのだから、相互作用ということを重んじるようにするのは益になる。日韓はお互いに相互流通していて、日本の国内と、国外である韓国、というふうにはっきりとは分けがたいところがある。内と外とははっきりと分け隔てられているというよりは、ていどの問題にすぎないのだ。

 日本としては、日本の立ち場をとっていて、それしか見えていないところがあるだろうが、韓国の立ち場もまたある。韓国としては、自国である韓国の動機づけに適合するような行動を行なう。わざわざ自国である韓国の損になってまでも(他国である)日本の益になるような行動をすることはありえづらい。

 日本が自国に益になるように行動して、韓国だけが一方的に損になる、ということはおこりづらいことだろう。日本が一方的に勝って、韓国が一方的に負けるということはおこりづらくて、韓国は韓国で自国の動機づけに適合する行動をとるだろうし、日本は日本で自国の政府が賢い行動をするとはかぎらないのだ。

 いまの日本の政府は、長期の利益を見こして賢い行動をとっているとは見なしづらい。そういう点で、日本のいまの政府は、日本の国益に反することをしているのだというおそれがある。

 デール・カーネギーの『人を動かす』では、人を動かすためには、盗っ人にも五分の理があることを認めよと言っているのがある。ほかには相手に重要感をもたせて、相手の立ち場に身を置くことがいるとカーネギーは言っている。韓国が盗っ人というわけではないが、日本は自国である日本の立ち場だけではなくて、韓国の立ち場をくみ入れるようにして、相互作用ということを見るようにするのはどうだろうか。それがひいては人(他国)を動かすことにつながることに役だつ。

 参照文献 『心理学って役に立つんですか?』伊藤進 『ダメ情報の見分けかた メディアと幸福につきあうために』荻上チキ 飯田泰之 鈴木謙介現代思想を読む事典』今村仁司