ロシアの報道はどうあるべきだったのか―報道がどうであったら、ロシアが戦争に向かうのを防げたのか

 戦争をやっているロシアにおいて、報道はどのようにあるべきだったのだろうか。

 ロシアにおいての報道を、規範や当為(sollen)の、かくあるべきの点から見てみると、反権力であるべきだった。反権力の報道をやっていれば、戦争を防げたおそれが高い。

 報道がロシアを戦争にみちびいた。そう言うことが言えそうだ。

 ロシアでは国民が報道の自由をもてていない。国民が知る権利をもっていない。ロシアには表現の自由(free speech、free expression)がないと言えるだろう。

 報道機関は、国家のイデオロギー装置だから、国を戦争にみちびいてしまいやすい。国家のイデオロギー装置であるのがもろに出ているのがロシアの報道機関だろう。

 日本を見てみると、戦前の日本を戦争にみちびいたものが報道だと言える。報道が戦争をあおり立てることで、日本が戦争に向かうのをうながした。報道が日本の愛国をあおり立てたのである。

 報道を法律でしばっていたのが戦前の日本であり、新聞紙法などがあった。戦前の日本のように、いまのロシアでも、新聞紙法のようなものがありそうだ。自由な報道をさせないようにして、国民に知る権利をもたせない。表現の自由を否定する。

 反権力の報道がいかにできるかが、国が戦争に向かわないようにするためにはいる。反権力の報道といえば、日本では朝日新聞などがあるが、朝日新聞は与党の自由民主党などからぼろくそにたたかれている。

 反権力の報道である朝日新聞が、自民党などによってぼろくそにたたかれているのは、日本が戦争をやりやすくなることにつながる。日本が戦争を行なえる方向に進んでいっている。

 朝日新聞自民党などから強くたたかれずに、自由な報道の活動ができるのであれば、報道における規範や当為の点からするとよいあり方だ。かくあるべきの点で、報道が政治の権力を十分に批判することができていれば、国が戦争に向かうのを防ぎやすい。

 日本で朝日新聞が強くたたかれているように、ロシアではロシアの朝日新聞に当たるようなものがそうとうに強くたたかれていることだろう。ロシアでは、日本の朝日新聞に当たるようなものが、そもそも報道の活動をすることが許されなくなっているのがあるだろう。日本でいえば、読売新聞や産経新聞のようなものしか報道の活動が許されていないのがロシアだ。

 日本の読売新聞や産経新聞は、報道の規範や当為の点からすると、報道の仕事をほとんどまったくやっていない。規範や当為の点からすれば、きびしく見れば〇点に近いだろう。そういったよくない報道機関しか活動が許されていないのがロシアであり、それによってロシアは戦争に向かうことになったと言える。

 規範や当為の点からすれば、朝日新聞であっても、一〇〇点を与えられるほどではないから、そんなにほめるのには値しないかもしれない。報道が国を戦争にみちびかないようにするためには、反権力の報道である朝日新聞のようなものが、自由に報道の活動ができることがいる。

 日本では、自民党などが上から朝日新聞を強くたたいているのがあり、反権力の報道がそうとうに弱っている。その反面で、読売新聞や産経新聞のような、規範や当為の点で(きびしく言えば)〇点に近いようなものが力をもち、売れ行きを保ち、一定の支持を得ている。悪貨(悪い報道)が良貨(反権力のよい報道)を駆逐するグレシャムの法則がはたらいている。

 報道はこうであるべきだとの規範や当為の点で、ロシアはそうとうに悪いあり方になっているのがあり、それによって、報道がロシアを戦争にみちびいたところがある。ロシアと同じくらいに悪いとは言い切れないのにせよ、日本の報道もまた規範や当為の点からして悪いあり方になっていっている。

 日本でも、戦前に見られたように、報道が日本を戦争にみちびきやすくなっている。その中では、規範や当為の点からの報道のよいあり方(反権力のあり方)をいかに持てるのかがかぎだろう。

 日本の報道は、規範や当為のところが弱く、公共性がとぼしい。報道に自由や自律性(autonomy)がない。NHK を見るとそれ(公共性がひどくとぼしいこと)が明らかだ。ロシアでは国家の公が肥大化していて、国が戦争をおこして、個人の私をおさえつけている。日本でも国家の公が肥大化していっている。個人の私を否定する動きが強まっている。

 日本の報道は、情報の統制をやめて、情報の民主化をやらないとならない。日本の国が上から流す情報を、報道がそのままたれ流して報じるのを改めて行かないとならない。上が言うことをそのままたれ流す報道は、戦前の大本営発表にひとしい。戦前についての反省が欠けているのをしめす。政治と報道の政と報がいかにゆ着しないようにして距離をとれるのかが、まっとうな報道にはいるものだろう。

 参照文献 『そして、メディアは日本を戦争に導いた』半藤一利(はんどうかずとし) 保阪正康(ほさかまさやす) 『公共性 思考のフロンティア』齋藤純一 『NHK 問題』武田徹 『公私 一語の辞典』溝口雄三 『情報政治学講義』高瀬淳一 『共謀者たち 政治家と新聞記者を繋(つな)ぐ暗黒回廊(かいろう)』河野太郎 牧野洋(よう)