公文書の改ざんからうかがえる、日本の政治の危なさ―あせりすぎている

 政治は結果だ。そう言われることがあるのについてをどのように見なせるだろうか。いまの日本の政治では、政治の結果において、省庁でいくつもの公文書の改ざん(書き換え)が行なわれていたことがわかった。

 いくら政治において結果が大事だとはいっても、公文書の改ざんをしてしまってはしかたがない。あたかも結果が出ていたかのように見せかけるのだと、表面をとりつくろっているのにすぎない。ことわざでは、うそはあとではげる(ばれる)と言われるが、まさにいまの日本の政治では、これまでにつかれたいくつもの嘘がはげてきていると言える。

 いまの日本の政治では、できるだけ早くによい結果を出そうとしていて、あせりがあるために、科学のゆとりが欠けている。あせっていて、できるだけすぐによい結果を出そうとしていると、不正がおきることが多い。あせるのは、ゆとりが欠けているから失敗をまねきやすい。いまの日本の政治でいくつもの公文書の改ざんがおきているのは、あせってよい結果を出そうとしすぎていることから来ていそうだ。

 どういった目的のために、どういった手段をとって行くのかが、おかしくなってしまっていて、目的と手段の転倒がおきてしまう。目的にふさわしい手段をとるような目的合理性が欠けてしまう。公文書の改ざんをしてでも、そうした不正な手段をとってでも、よい結果が出たかのように見せかける。目的とされることも悪いし、とっている手段もまた悪い。公文書の改ざんをすることは、手段としてとってはならない不正なものだ。

 適正さと効率性の点から見てみると、与党である自由民主党の政権は、支配の効率性を高めてきている。そのいっぽうで適正さがどんどん欠けてきている。それがあらわれているのが、公文書の改ざんがいくつもおきていることに見られる。

 たとえ政権による支配の効率性が高まっているのだとしても、適正さが欠けているのがあり、いったい何の目的のために効率性を高めているのかがわからなくなっている。目的がわからないままに、ただ支配の効率性だけを高めているので、虚無主義(nihilism)におちいって、公文書の改ざんなどの不正な手段をとってしまう。

 できるだけ早くによい結果を出そうとしすぎてしまうと、あせりがおきてしまい、目的にたいするふさわしい手段をとれなくなり、目的合理性が欠けてしまう。できるだけ早くによい結果を出すのだとしても、いったいその結果がどのような意味あいをもっているのかがわからなくなり、ただ表面のうわべの見せかけの結果を出すことだけが自己目的化する。

 科学のゆとりが欠けていると、政治において、じっくりとやって行くとか、とことんまでやって行くことがなくなり、政治をやることから遠ざかっていってしまう。政治ではなくなってしまい、非政治のようになる。

 これまでの日本の政治では、政治がしっかりとできてきているとは言えず、政治と非政治の中間のあわいのようなところにあったと言えるとして、それがどんどん非政治の方向に傾斜していっている。これまではあまり政治ができていなかったから、これからはしっかりと政治をやって行こうといったことにならず、その逆に、これまでにできていなかったのが、さらに悪化する。

 時間をかけて低温で熟成させて行くか、それともてっとり早く促成に栽培するかでは、てっとり早くやろうとすればするほど政治から遠ざかってしまう。できるだけ早くに結果を出そうとしてしまうと、てっとり早くやろうとすることになり、政治と非政治があるなかで、非政治のほうに傾斜して行く。そこを改めるようにして、政治と非政治がある中で、政治をしっかりとやって行く方向に向かうように努めて、科学のゆとりをもつようにして行きたい。

 いまのところ、日本の政治は、政治と非政治がある中で、非政治の方向に向かって行くことに歯止めがかかっていない。そこにいかに歯止めをかけることができるのかが求められている。目的と手段のあいだの目的合理性や、民主主義による形式合理性が壊れていて、非合理におちいっているところがある。

 これまでの日本の政治では、もともとが、それほど目的合理性や形式合理性が高かったとはいえず、きちんと民主主義ができていたとは言えそうにないが、ますます合理性が失われていって、非民主主義や非政治に落ちていってしまっているとすれば危ない。

 できるだけ早くによい結果を出そうとするのだと、結果つまり実質をじかにとろうとしてしまう。民主主義や法の決まりや公文書の管理などの、形式に当たる、過程の手つづきのところがぜい弱になる。結果つまり実質さえとれればよいとはいっても、形式が壊されてしまうと、実質もまたおかしくなる。いっけんすると実質よりも価値が劣るようなのが形式のところだが、そこが壊されると、何でもありといったことになり、上の地位の政治家による不正なことが何でも甘く許されるようになりかねない。

 参照文献 『逆説の法則』西成活裕(にしなりかつひろ) 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『公文書問題 日本の「闇」の核心』瀬畑源(せばたはじめ) 『法律より怖い「会社の掟」 不祥事が続く五つの理由』稲垣重雄 『悪の力』姜尚中(かんさんじゅん) 『政治家を疑え』高瀬淳一