野党は、批判するよりも、提案するほうがよいのか―批判型の野党と提案型の野党

 批判ばかりする野党はよくない。立憲民主党などは、与党のことを批判ばかりしているからだめだ。批判型ではなくて提案型の野党のほうがよい。野党の日本維新の会はそう言っている。

 維新の会が言っているような提案型の野党は、与党のことをすけだちするようなものにすぎない。官僚は与党を補佐するが、それと同じようなものになってしまう。提案型の野党についてはそう言われているのもあるが、批判型と提案型ではどちらのあり方のほうが野党としてのぞましいのだろうか。

 批判型か提案型かであるよりも、与党と野党とを問わず、批判受けとめ型でなければならない。批判を受けとめないような批判拒絶型の政党ではよくない。与党である自由民主党は、批判を受けとめない批判拒絶型の政党になっているために、政治が悪くなっている。

 批判をするのがよいのかそれとも提案をするのがよいのかは、状況しだいによって変わってくる。状況しだいでは批判をすることがいることがあるし、提案をすることがいることもある。はじめから、批判が悪いとか、提案がよいとかとして、含意をこめることはできないことだ。具体の個別の状況をくみ入れてみないとならない。

 総合として、批判するのが悪くて提案するのがよいとはいえず、分析として、これについてのここは批判をするのがよいとか、こういう提案をするのがあってもよいとかとするのがふさわしい。総合によるのではなくて、分析によるようにして、具体の個別のことをくみ入れるのや、部分にこまかく分けてとらえることがいる。分析として見てみれば、批判の中にはよい批判や悪い批判があり、提案の中にはよい提案や悪い提案があるから、批判つまり悪いとか、提案つまりよいとは含意をこめられない。

 野党は、そもそもの話として、与党にたいして批判の立ち場をとりやすい。なぜかといえば、野党は議会の中での反対勢力(opposition)であり、与党の多数派がつくり出す内閣を支持しないものだからである。内閣を批判するのが野党の立ち場だ。

 議会の中にあるのが野党であり、野党が何をするのかとはべつに、議会が何をするのかを見てみられる。議会は三つの権力である行政と立法と司法の中で、立法に当たり、三つの中でもっとも重要なものだとされている。憲法の第四十一条による。

 議会の中では、行政のやることを批判として監視することが野党のつとめとなっている。行政がやることに悪い点やまちがった点がないかどうかを見つけて行く。悪い点やまちがった点が見逃されると、行政で悪いことが行なわれてしまう。行政がやろうとしていることの中に誤りを見つけて、それを正して行く。

 いまの日本の政治では、議会が行政をきちんと監視しなくなっている。ほんらいであれば、議会がきびしく行政を批判して、行政をよい方向に導いて行かないとならないが、それができていない。行政が上に立ってしまっていて、議会を骨抜きにして壊している。

 何をやらなければならないのかといえば、批判型から提案型に野党がなることがいるのだとはいえそうにない。やらなければならないのは、議会がまともに機能するようにすることだろう。その中で、野党が与党をきちんと批判できるようにして行く。議会がきちんと機能する中で、野党が与党を批判できるようにして、与党のまちがったあり方が正されるようにして行く。

 批判を受けとめないような批判拒絶型に与党である自民党がなってしまっているのと、議会が骨抜きにされて壊されているのは関係し合っている。批判拒絶型の政党が許容されないようにして、与党と野党を問わずにすべての政党は他からの批判に開かれていることがいる。とくに与党は、権力を持っているから、他からの批判に開かれているのでないとならない。

 変わらなければならないこととして、批判型から提案型に野党が変わることがいるのであるよりは、議会のあり方を改善することがいる。議会の価値をきちんと認めるようにして、民主で生産性がある議論が行なわれるようにして行く。批判を受けとめない批判拒絶型の政党に与党がなっていると、議論が行なわれなくなってしまう。

 批判拒絶型の与党だと、与党は正しいとなり、与党がつっ走っていってしまう。抑制と均衡(checks and balances)がかからない。いまの日本の政治はそうなってしまっていて、与党である自民党の一強のあり方になっているから、与党のあり方が変わらなければならない。

 働きかけはするが、受けとめはしないようになっているのがいまの与党である自民党だ。自民党岸田文雄首相は、聞く力をもっていると自分で言っているが、自民党には聞く力があるとは言いがたい。受けとめようとしたり聞こうとしたりしないのがあるから、野党が変わることがいるのよりも、与党が変わることがいる。働きかけることよりも、受けとめることを与党である自民党は十分にやらないとならない。とりわけ、野党からの批判の声を与党である自民党は受けとめるようにして、聞く耳を持つことがいる。

 参照文献 『十八歳からの民主主義』岩波新書編集部編 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき) 『〈聞く力〉を鍛える』伊藤進 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫超訳 日本国憲法池上彰(いけがみあきら)