五輪と日本の政治の決め方のまずさ―空気によるあり方

 もうやることが決まっているのが五輪だ。やることが決まっているのだから、それにたいして反対をしてもしかたがない。そう言われているのがあるが、五輪に反対を言うことは意味のないことなのだろうか。

 日本の政治においてさまざまなものごとが決められる。そのさいの決め方にはまずいところがある。空気によってものごとが決められてしまう。公共性における公開性が欠けている。

 西洋の国では言葉は高文脈(high context)で文化は低文脈(low context)だ。政治でものごとを決めるさいに、あとでふり返られるように記録を残しておく。それが行なわれやすい。空気を読むことによるのではない。

 日本は言葉は低文脈で文化は高文脈なので、空気を読んでそんたくすることが行なわれる。あとでふり返られるように記録を残しておかない。まずい記録は改ざんしたり捨てたりしてしまう。国のためではなくて国民のために記録を残すといった視点が政治にない。

 だれがどうやって政治のものごとを決めたのかを国民に公開することがいる。日本の政治では公開性が欠けているのがあり、よくわからないままにものごとが決められてしまう。

 政治においてものごとを決めるさいには、だれがどうやって決めたのかの過程がはっきりとしていることがのぞましい。過程のところがないがしろになっていて、ただたんに政治においてものごとが決められるのだと、決め方にまずさがある。

 決め方にまずさがあるのが見うけられるのが五輪だろう。日本の政治においてものごとを決めるさいの決め方のおかしさがあることが関わっている。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が広がっている。そのなかで東京都で夏に五輪をひらく。五輪をひらくかどうかを決めるさいには、ひらくことを決めるにせよひらかないことを決めるにせよ、いずれにせよきちんとした決め方をすることが大切だろう。いい加減でずさんなやり方ではまずい。

 だれがどうやって政治のものごとを決めるのかをできるかぎりはっきりとさせたい。だれがどうやっての過程のところがはっきりとしていないと、政治のものごとの決め方としてはよくない。全体の空気によって政治のものごとが決められてしまうと、おかしな方向に向かってつっ走って行ってしまいかねない。

 日本の政治では、全体の空気によってものごとが決められることが少なくないものだろう。全体の空気が一つの方向に向いてしまう。そこに危なさがあることは否定できない。抑制と均衡(checks and balances)がはたらかないことになる。

 透明性があることが政治でものごとを決めるさいには求められる。日本の政治ではそれがなくて、かなり不透明になっている。不透明だとだれがどうやって政治のものごとを決めたのかがわからなくなる。無責任の体制によってものごとが決められることになる。説明責任(accountability)が果たされない。

 何となくといったことで、全体の空気によってものごとが決められて、ものごとが進められて行く。ものごとをやるさいに、それを進めて行くことよりは、歯止めをかけて抑制して行くことのほうがしばしばむずかしい。進めて行くことはやり方によってはやりやすいところがあるが、待ったをかけて止めることはよりむずかしさがある。やり直し(redo)の機会はもたれづらいのがある。車の運転でいうと、加速はさせやすいが、減速はできづらい。待ったをかけて止めることは消極性によるから、否定や負のこととしてとらえられがちだ。

 ものごとをやらないよりもやることのほうが、そこに積極性があるとされて、肯定や正のものとして見なされやすい。いったん政治においてやることが決められたら、あとはいさぎよくそれを進めるだけだとなりやすいのが日本にはある。全体の空気によってものごとが進められて行く。全体の空気によってものごとが決められるから、決め方がおかしいのがあり、だれがどうやって決めたのかがあいまいなままにされる。

 決め方にきちんと公開性があるようにして透明性があるように改めることがいる。全体の空気によって決めてしまわないようにすることがいる。やるのとやらないのとでは、やるほうが好まれやすく、とちゅうでやることに待ったをかけて止めるのは好まれづらい。歯止めをかけて抑制するのはむずかしいのがあるが、とにかくものごとを進めさえすればそれでよいのではないから、待ったや止めがいるときがしばしばある。おもて向きの積極性ばかりをよしとはせずに、消極性によるものがもつ積極性に目を向けるようにしたい。

 参照文献 『古典の扉 第二集』杉本秀太郎(すぎもとひでたろう)他 『「説明責任」とは何か メディア戦略の視点から考える』井之上喬(たかし) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『思考のレッスン』丸谷才一 『国家と秘密 隠される公文書』久保亨(とおる) 瀬畑源(せばたはじめ) 『原理主義と民主主義』根岸毅(たけし)