完全な人間と完全な人工知能(絶対的な人間と絶対的な人工知能)

 人間か人工知能か。このちがいを相対的なものとして見ることができるとすると、ていどのちがいということになる。人間は非人工知能で、人工知能は非人間というふうにはっきりと分けられるのではなくて、人間は部分的に人工知能で、人工知能は部分的に人間だということになる。

 人間は純粋に人間であって、人工知能は純粋に人工知能だというのは、なりたつものなのだろうか。必ずしも自明だということは言えないものだろう。人間が活動する世界の中には、かなりのていど科学技術が入りこんでいる。科学技術は二進法などによるもので、それによる利便性を人間はかなりのていど得ている。

 人間と人工知能は、命題と反命題のような関係だとすると、弁証法によるものととらえられる。人間と人工知能がお互いにぶつかり合わないようにするためには、敵対しないようにして、お互いに友好になるような社会関係が築ければよい。

 人間と人工知能がはっきりと分けられないものだとすると、人間は人工知能ではなくて、人工知能は人間ではない、とは必ずしも言えそうにない。人間というものは自明ではなくて不明だというふうに見られる。人間という物語と、人工知能という物語があるという見かたがとれる。人間と人工知能とは、実体であるのではなくて、関係や差異によってなりたっているのだ。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『構造主義がよ~くわかる本』高田明