いまの政権が日本をよくしたし、よくして行けるという、カタリ(騙り)による物語の筋書き

 野党は批判や文句を言うだけではなくて、よい代案を出すようにしてほしい。首相はインタビューにおいてそう言っていた。

 代案というのは、何か新しく変えるようなものだけではなくて、現状維持を含む。なので、現状維持をくみ入れれば、代案がないということはない。

 現状維持を代案としてとれないのであれば、討論はなりたたない。討論では、たとえば、このままでいてよいのか、それともよくないのか、ということで論じ合うことがある。このままでいてよいという立ち場がとれないと、あらゆることにおいて、何でもかんでも変えたほうがよいということになるから、おかしくなる。

 現状維持は消極で、現状を変えるのは積極かというと、そうとは言い切れそうにない。立証の責任としては、基本として現状維持のほうが優位である。何か新しく現状を変えようとするほうが不利であるために、立証の責任を負うのである。現状を変えようとするほうが立証の責任を負うので、利点と欠点を明らかにして、客観としてよいことを説得性をもって説明しないとならない。

 反対勢力(オポジション)である野党などが批判をするのと、代案を示すかどうかとは、分けて見られるものである。代案というのは現状維持を含むのだから、代案があるかないかは別にして、批判にたいして政権は受け答えることがいる。

 政権は、野党とはちがって、日本をよくする有効な手だてを打ててきている。将来をどうするのかの視野を打ち立てて示している。首相はそう言っていた。たしかに、ある一面をとり上げれば、よい結果が出ているということは言えるだろう。

 ある一面においてはよい結果が出ていると言えるところはあるものの、公文書の改ざんや統計の不正の疑惑があるのは見すごせない。もととなる国の情報にごまかしやずさんさがあるので、本当のところはどうなのかが分からなくなっている。

 いまの政権によって日本はよくなっていて、これからもそうなるという物語の筋書きをとりたいのだろうが、それはあまりにもいまの政権にとって都合がよいものだ。政権にとって都合がよい大きな物語がなりたつということは言えず、現実からずれた虚偽意識(イデオロギー)におちいっていると見られる。

 参照文献 『論理が伝わる 世界標準の「議論の技術」 Win-Win へと導く五つの技法』倉島保美 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『政治家を疑え』高瀬淳一 『使える!「国語」の考え方』橋本陽介 『「野党」論』吉田徹