布マスクの配布で、マスクの不足が解消する成果が出たのだと首相は言っていた―因果関係があるかどうか

 首相が決めた布マスクの配布で、マスクの不足が解消された。社会の中にマスクが出回るようになった。そうした成果が出ているのだと首相は言っていた。

 これを逆から見てみると、マスクの不足があるていど解消されたのがあるとして、その結果の原因は何なのかを見てみられる。

 修辞学でいわれる因果関係からの議論で見てみると、マスク不足のあるていどの解消という結果があるとして、その原因を色々に見て行ける。その原因に首相が決めた布マスクの配布があるのだとするのはやや苦しい。

 首相が決めた布マスクの配布の政策は、じっさいにはまだほとんどの都道府県で配布されていなくていまだ準備中だということが言われている。配布されたのはまだ全体の三パーセントほどだということが言われている。布マスクの中に不良品があってずさんなつくりなのがわかったのがあり、布マスクを配布する前に状態を調べる作業が(ただでさえ大変な)保健所に押しつけられているという。

 因果関係があるかよりも以前に、相関関係があるかが疑わしい。首相が決めた布マスクの配布の政策と、マスク不足のあるていどの解消との結果とが、まちがいなく相関しているとは見なしづらいのがあり、布マスクの配布の政策がなければマスク不足が解消しなかったのかどうかは定かではない。

 じっさいに布マスクはまだ多くの都道府県で配布されておらず、まだ準備中のところが多いというが、じっさいに配布しなくても、配布するぞというだけで、マスク不足を解消する効果があるのだということがツイッターのツイートで言われていた。

 じっさいに配布されていなくても、配布するぞというのだけでも、マスク不足を解消することにつながるのかどうかは、首相のマスクの配布の政策とこじつけているところがいなめない。そこまで首相の布マスクの政策と無理やりにこじつけなくてもよいものだろう。

 なにがなんでも首相が決めたとされる布マスクの配布に成果が出たのでないとならないというのではないから、それと強引に結びつけなくてもよいのがある。首相の政策に無理やりにこじつけて見ないのであれば、首相の布マスクの政策ではないほかの要因が色々にあるだろうから、それを見て行けば、首相の布マスクの政策よりもよりふさわしい要因が見つかる見こみは少なくない。

 雨が降らないで困っているのがあるさいに、まじないで雨が降るのをお祈りしたら、そのごに雨が降った。この流れがあるとして、まじないの成果で雨が降ったのだとは必ずしも言えそうにない。首相の布マスクを配る政策は、いわばまじないのようなところがなくもない。

 流れの中では、まじないが行なわれたのはあるのだとしても、それによって雨が降ったのかは定かではないから、まじないの成果が出たとは言い切れず、まじないとはまったく関わりがなくたんに雨が降ったのだということがあるし、ほかの色々な要因によっていることがある。

 参照文献 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信