医療関係者はまちがいなく新型コロナウイルスへの感染を防げると言えるのだろうか

 新型コロナウイルスへの対策に医療関係者がたずさわっていた。その医療関係者に新型コロナウイルスに感染しているかどうかの検査を行なっていなかったことがわかった。

 検査を行なわなかったわけとして、医療関係者は専門の知識や技能をもっていることをあげていた。知識や技能をもっているから、感染しないまたはそれを防げるのだと行政は見なしているようだ。

 たしかに、医療関係者は専門の知識や技能を持っているだろうが、そうであるからといって、まちがいなく感染しないのだと言い切ることはできそうにない。

 感染してしまう複数の要因があるとすると、それらをすべてとり除けるのであれば、感染する確率はほぼゼロになるだろう。感染につながるいくつもの要因をすべて払しょくできれば感染の確率をほぼゼロにできるだろうが、その完全な防備は理想論にとどまるものであって、現実論としては、どこかに穴がおきてくる。その穴が小さければ確率は低いだろうが、穴が大きくなればなるほど確率は高くなる。

 感染を完ぺきに防ぐためには、さまざまな複数の要因をすべて避けていなければならないが、それをするための一つの助けになるのにすぎないのが、専門の知識や技能だ。知識や技能は必要となる条件ではあったとしても十分な条件になるとは言えそうにない。それらがあったとしても、じっさいに行動に移さないことがあるし、うっかりとした不注意もまたある。

 いついかなるさいにも、どのようなことであったとしても、知と行とが必ず一致するとはかぎらない。たとえば、お笑いを研究している人がいたとしても、その人がつねに爆笑をとれるとは限らないし、経済を研究している人がかならず金持ちになれるとは言えないし、政治を研究している人がすぐれた政治家になれるとは言えそうにない。

 知と行のあいだにはみぞがあることがあるから、知が行を完全に保証するとは言えないし、知や行のどこかに抜けがあることがある。ことわざでいう、医者の不養生や紺屋の白ばかまということがあるから、他の人のことにたずさわっているのだとしても、自分のことはついおろそかになってしまうこともまたある。

 参照文献 『本当にわかる論理学』三浦俊彦 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ)