一利一害や一長一短はあるだろうけど、最低賃金の額を引き上げるのには個人的には賛成だ(賛否はあるかもしれない)

 低すぎる最低賃金の額が、人手不足の真の原因だ。こう題された記事があった。この記事については、おおむね賛同する人の声が少なくないようだ。

 最低賃金を引き上げるとよくないという説も言われている。韓国では最低賃金を急に引き上げたために、混乱がおきているという。急にではなくて、少しずつ上げるほうが危険性は少ないということだ。

 最低賃金をむしろ無くしたほうがよいという声も言われている。最低賃金を無くすということは、労働市場に完全にゆだねてしまうということになるから、市場の失敗がおきかねない。労働者に下駄をはかせることで人間らしいあつかいがとられるが、その下駄(最低線)をなくしてしまうことになれば、非人間のあつかいが横行することが危ぶまれる。

 最低賃金で働いている人が、生活保護を受けている人を下まわるようではまずい。そこで、生活保護を引き下げるのではなく、最低賃金を引き上げるべきではないだろうか。最低賃金で働くことが、生活保護を上まわるようにしないと、労働の意欲がわかないことになる。

 日本国憲法で保障されている、最低限度の生活を送れる権利と、(その権利をもつ)個人とのあいだに、かけ橋をかけるのが労働の法律だ。そのかけ橋をかけるために、最低賃金で働いていても、人としての最低の生活は送れるというふうに、下駄をはかせるようにする。その下駄となるものの一つとして、最低賃金の額があるので、その下駄をいまよりも高くしないと、最低線(最低限度の生活)に届いていない。

 衣食住の、最低限度の生活が送れるように、はたらいている人も、(何らかの事情があって)そうではない人も、みながもれなく生存権が満たされるようになってほしいものだ。そのために、最低賃金を引き上げるようにして、なおかつ社会保障のあり方を抜本で見直して、柔軟できめ細かい救いの手がとれるようにできたほうが公平になりやすい。いまはそうなっているとは言えず、救貧と防貧がうまく機能していないと見られる。

 参照文献 『ここがおかしい日本の社会保障山田昌弘 『貧困の倫理学馬渕浩二 『労働法はぼくらの味方!』笹山尚人 『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』今野晴貴