バイトテロには色々な要因が関わっていそうだ

 バイトテロと呼ばれる動画がとり沙汰されている。飲食店やコンビニエンスストアでアルバイトをしている人の中で、悪ふざけをやって、それを動画にして流す。企業はそれで損害をこうむる形だ。引きおこさせないようにするために厳罰化の動きをとるつもりの企業があるという。

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)があることが、バイトテロの悪ふざけを引きおこさせる外的な誘因(インセンティブ)の一つになっていると見られる。

 賃金が低いからバイトテロがおきるのだから、賃金を上げるべきだ、という声がある。これについては反対の声もあって、賃金が高くてもバイトテロなどの不正をやる人はやるのだから、賃金が高かろうとどうだろうとさしたるちがいはない、ということだ。たしかにこの意見には一理ある。

 精神論や道徳論を抜きにすることができるとすると、賃金が低いということと、アルバイトを含めた労働者が人間として尊重されながら働くことができていない、というのは、バイトテロに間接に関わっているのではないだろうか。企業は労働の決まり(ワークルール)を無視していることが少なくない。労働において違法がまかり通ってしまっている。

 アルバイトに賃金が支払われていることは確かだが、そもそも日本の最低賃金の額では生活することすらままならない。日本の最低賃金の額は、その額で生活する人がいないということが前提条件になっているという。かつての右肩上がりの時代にとられていたものの名残りが引きつづいている。

 コンビニエンスストアや飲食店において、最低賃金やそれに近い額の賃金しか支払われないのではなく、どういった仕事を任されて、それにはどういった責任があって、それにたいする適正な賃金(報酬)が対価として支払われているのかがある。待遇はよいものなのかというのがある。そうしたことがきちんと整っていれば、仕事の責任がはっきりするので、バイトテロの悪ふざけをおきづらくすることができるのではないかと個人としては見なせる。ゼロにはできないかもしれないが。

 日本の労働のあり方では、低福祉と低賃金と高命令になっているという。これを中福祉と中賃金と中命令に改めることができればのぞましいと言われる。低賃金や高命令ということがあるとして、それを改めるようにする(または明確化する)ことが、バイトテロを引きおこさせなくするための十分条件になるとは言えないとしても、一つの必要条件となるということは見こみとしてはある。

 参照文献 『ここがおかしい日本の社会保障山田昌弘 『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』今野晴貴