外国人にたいする労働の制度に見うけられる、制度の不正義と実践の不正義

 最低賃金を下まわる時給で働かされる。一時間に二〇〇円や三〇〇円しかお金が支払われないという。やらされる仕事は、前もって聞かされていたこととはちがい、じっさいには原子力発電所の近くの除染作業をさせられる。隷属の不当な労働を苦にした失踪者は数千人にのぼるという。

 外国人技能実習制度では、そうしたことがおきているという。この制度のもとでのすべての外国人に当てはまるのかはわからない。すべてとは言えないにしても、この制度のおかしさは、憲法で保障された生存権や、労働における法の決まりがないがしろになっているところにあるだろう。

 制度のもとで、働かされる外国人が、いちじるしい搾取や抑圧をこうむるのは不正義だ。この不正義は、外国人を目的としてではなく手段としてあつかうことによっている。手段として物であるかのようにあつかう。日本という国の政治や経済における理性が退廃している。理性が道具化している。これがおきないようにするように改めることがいる。

 最低賃金を下まわる額で働かせたり、前もって言われていたこととはちがうことである除染作業などをやらせたりするのは、法に反することだろう。最低賃金の額はそもそも低めなのはあるが、何のために最低賃金の決まりがあるかといえば、それを下まわる額での労働をさせないようにするためにとられている。前もってこれをやると言われたことがあれば、そのほかのことはやらないでもよいのであることもいる。

 制度を通して外国から日本にやって来た人にかぎらず、国内の人においても、働くことの法の決まり(ワークルール)が守られないと、決まりがあることの意味がない。最低賃金や、前もって言われていることのほかはやらせないのは、必須のものだから、これをないがしろにするのが外国人技能実習制度なのだとすれば、この制度そのものが不正義である。制度の不正義があるし、この制度にのっかるのであれば、実践の不正義をしていることにもなる。

 外からやって来た人を含めて、働く人のすべてに十分な権利がとれるようにするのでないと、もともとが不利な立ち場に置かれやすいのが改められない。十分に権利がとれるようにするためには、外からやってきた人を含めて、すべての働く人を例外なく包摂する、憲法や労働の法の決まりが守られることがいる。決まりが守られることによって、すべての働く人がまっとう(ディーセント)なあり方になり、まっとうな生を送れるようになるように、政権や政治は早急に動いてもらいたいものだ。いまのところ現実はそうはなっていないで、逆の方向に動いているようだ。