いまの首相による政権(と役人)による、統計の不正と、統計の悪用と、虚偽意識(イデオロギー)

 首相である私を含めて、われわれが統計をいじってアベノミクスをよくしようとできるはずがない。国会において首相はそう言っていた。受けとるほうとしては、首相の言い分(言いわけ)を本当のこととしてそのまま受けとれるはずがない。個人としてはそう見るしかない。

 省庁における統計の不正については、国の危機なのだから、一刻も早く真相の解明を進めるのがのぞましい。それなのにもかかわらず、統計を担当していた省庁の役人を突然に辞めさせて、いま統計を担当していないということで、その役人を国会に呼ぶことを与党はこばんでいる。真相の解明の邪魔をしているのだ。

 統計をいじってアベノミクスをよくすることはできるものではないと首相は言うが、これについては、できないということ(非存在)を証明するのだから、直接ではなく間接の証明をとれる。できないということの逆の、できるという仮定をとって、それを否定すればよい。統計をいじってアベノミクスをよくすることができるという仮定は、それなりに成り立ってしまうのではないだろうか。

 いまの首相による政権は、省庁の役人の人事を握っているという。統計の不正がとり沙汰されたあとに、担当の役人を国会に呼びたくないがために、突然に辞めさせるということを与党はしている。こうしたことをしているのだから、少なくとも、統計をいじってアベノミクスをよくすることができるという仮説は、一つの見かたとしては成り立つものであるのにちがいない。唯一にして絶対の結論とまでは言えないにしてもだ。

 自分たちに都合のよいように統計をいじってアベノミクスをよくしているかどうかということだけではなく、いまの首相による政権は、統計を悪用していると見られる。自分たちに都合のよい数字(情報)をとり上げて、都合の悪い数字(情報)はとり上げない。それで、成果が出たのだとしている。統計を悪用して、自分たちに都合のよいものばかりをとり上げるのでなく、都合の悪いものも偏りなくとり上げるのならまだしも、そうではないのだから、経済政策の成果が出ているということを自明のものとはしづらい。

 統計をいじったり、統計を悪用したりしてまでも、成果が出ているとしたて上げるのではなくて、ずらして行くようにするのはどうだろうか。いまの首相による政権にとって都合のよいことばかりをとり上げれば、よくしたて上げることはできるが、現実から隔たった虚偽意識(イデオロギー)におちいる。

 現実から隔たった虚偽意識を少しでも現実に近づけるためには、隠ぺいされている都合の悪いことをどんどんとり上げるようにする。そうして都合の悪いことも見るようにしないと、いまの首相による政権が自分たちを都合よく正当化することに歯止めをかけられる見こみが立ちづらい。

 参照文献 『実践トレーニング! 論理思考力を鍛える本』小野田博一