じっさい、もう、よくはない(よくはないものも少なからずある)

 じっさい、もう、経済の状況はよいのです。他のあらゆる数値がよい方向を示しているのです。首相は経済の状況を示す数値についてこう言っていた。これにたいして上西充子(みつこ)教授は批判を投げかけている。じっさいにはよくない実態もあるのにも関わらず、よい数値ばかりだと首相が言うと、悪い数値を公表できなくなる、という。

 自分たちの成果として、日本の経済がよくなっているということを示したいがために、よいことばかりをとり上げるのは、偏ったとり上げ方であって、統計の悪用だ。首相や政権は、自分たちに都合のよいことばかりをとり上げることによって、日本の経済がよくなっているというふうに象徴化や栄光化してしまっていはしないだろうか。その影には、悪いことを示すいくつものことが捨象されてしまっているのだ。都合の悪いものはわきに追いやられて、中心ではなく辺境(周縁)に追いやられる。これはまちがった抽象のしかたと言えるだろう。

 参照文献 『実践トレーニング! 論理思考力を鍛える本』小野田博一