研究に予算が下りないことを研究する―研究についての研究

 iPS 細胞の研究の予算が打ち切られかねない。二〇二二年で予算が打ち切られる案が言われているという。iPS 細胞の研究にたずさわる山中伸弥(しんや)教授は打ち切りの案にたいして強い不服を申し立てている。

 iPS 細胞の研究の予算が二〇二二年に打ち切られる予定なのだとすると、それを一つの問題だととらえることがなりたつ。その問題を研究するということもできるかもしれない。研究に予算が下りないという問題の研究だ。

 ある任意の研究に、客観的な意義があると認められるのならば、研究費として予算が下りる。そのようなおおむねの条件文がなりたつとすると、予算が下りないのならば、客観的な意義がもう一つ明らかではないというおそれがある。

 だれがどう見ても客観的な意義があることが明らかなのにもかからわず、そこに予算が下りないというのは、不自然なことだ。一般的に、色々な研究について、意義がはっきりと分かるものについては、予算が下りているものなのではないだろうか。もしあるていど合理的な予算の配分の決定が下されているのならばの話である。客観的に意義がわかりづらいかはっきりしないか、または意義がないというのなら、予算が下りなくてもとくに不自然ではない。

 予算が下りるべきなのにも関わらずそれが下りないのなら問題だから、予算が下りないという現象にたいして、その主たる要因となるものを探って行く。色々な要因があげられるだろうから、要因を解明するようにする。要因を体系として網羅的に分析する。

 主たる要因を探るようにして行って、その要因にたいして手を打てるような仮説を立てる。仮説が正しいかどうかを確かめてみる。一つの仮説だけが正しいとはならず、色々に見られるのがあるだろうから、色々な文脈で見ることもいるだろう。

 問題を何とかするための仮説を立てて、それが正しいかを確かめるさいに、反証(否定)してみることが欠かせない。仮説にまちがいがあることがあるから、それを確かめるようにして行って、まちがいがあることがわかったら、問題のあり方が変わって行くことがある。哲学者のカール・ポパーによるポパー図式を当てはめてみるとそうしたあり方となる。この図式は、問題、暫定(ざんてい)の解決案、批判、新しい問題、という流れによるものだ。

 参照文献 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『考える技術』大前研一 『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』仲島ひとみ 野矢茂樹(のやしげき)監修 『企画力 無から有を生む本』多湖輝(たごあきら)