性の交渉における、事前と事後―事前においてできるだろうこと

 性の交渉をするさいに、被害を与えたり、あとでまずいことになったりするのを防ぐ。そのためにはどうすればよいのだろうか。

 それについては、事前と事後というふうに切り分けて、事前にできることをできるだけやっておくことができるだろう。それをやったとしても、事後において、絶対に大丈夫だというまちがいのない保証は得られないかもしれない。

 事後における完ぺきな保証は得られないかもしれないが、いうなれば、車を運転するさいに、事故を完ぺきにゼロにすることはできないが、事故をおこさないようにできる限り気をつけておくことはできるのになぞらえられるかもしれない。

 事前において、気をつけられるところや、気をつけておくべきものがあって、それをどれだけ満たせているのか(または抜かりや手落ちがあるか)というのがある。たとえば、相手にお酒を飲ませないとか、お酒に酔っているときには性の行為をつつしむ(次の機会にする)とか、こういう性の行為をしたとしたらこういう帰結をまねきそうだとか、そういうふうな確かめられる点がいくつかある。

 自分というのは一人称だが、それだけではなくて、他者である二人称の立ち場に立ってみるとか、または客観に第三者である三人称の立ち場に立ってみるとか、そういうふうに事前に色々と見て行くようにできたほうがまちがいは少ない。一人称の自分の視点だけだと、ほかの視点を欠いているから、見落としがおきかねない。

 事前において、脳科学でいわれるメタ認知をもつようにして、熱だけにならないようにして、たとえほんの少しであったとしても冷の見かたをとるようにできれば、熱だけによって暴走してしまうのを防ぎやすいだろう。熱だけだと自分のことだけしか見えないかもしれないが、冷があることによって、他者はどうかという視点を持ちやすくなることが見こめる。

 事後においてまずいことになることを完ぺきには防げないかもしれないが、それはいうなれば車を運転していて事故がおきる確率をゼロにはできないのになぞらえられるのがあって、たとえゼロにはできないとしても、かぎりなくゼロに近づけることはできるのではないだろうか。そのためには、脳科学でいわれるメタ認知をもつようにして、熱だけではなく冷があるほうがよくはたらく。車の運転でいうと、だろう運転ではなくて、かもしれない運転をするゆとりがあれば、思いこみや慢心におちいりすぎるのを少しはおさえやすい。

 参照文献 『東大式 絶対情報学』伊東乾(けん) 『なぜウソをついちゃいけないの? ゴットフリートおじさんの倫理教室(モラル・レッスン)』ライナー・エアリンガー 高本教之 犬飼彩乃訳 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ)